くむーる&ぬむるす欧州旅行記


(7日目)
6月23日

 朝はけたたましいブザー音で始まった。
 昨日の夜注文した朝食を無愛想なウェイターが持ってきたのだった。でも朝からかくしゃくと働く人の姿を見るのは気持ち良い。向こうは「なんだこの、寝ぼけやがって」とか思ってんだろうな。
 窓際のテーブルにパンやコーヒー、テディベアのくまじを置いて、優雅なヨーロッパの朝食である。外では既に団体観光客がグラン・プラスと元祖・小便小僧の間をうろうろしていた。当然土産屋もある。日本語で「チョコレート・円・ウェルカム」とか書いてあったのには参った(-_-;)。

 今日は、昨日市庁舎の中にあるインフォーメーションセンターで手にいれたメトロ・マップ(無料)を頼りに市内をグルグル回る予定。まずは「黒いマリア像」があるという聖カトリーヌ教会へ。

 証券取引所駅の近くのキオスクみたいな売店で一日乗車券(赤色・ENN DAG/UN JOUR130BF)を購入し、あとは乗り放題。人のいる改札と自動改札があり、後者は日本のワンマンバスみたいな機械にチケットを通すだけで、ただ乗り防止のバーもなければ扉もない。キセルし放題の改札であった。ただし、バレたときが怖いらしいので、ちゃんとキップは買いましょう。
 一つ目のSainte Catherine駅で降りる。地上に出ると、だだっ広い広場に出た。向こうにえらい汚れた建物がある。あれが聖カトリーヌ教会(St.Catherine)だ。ちょうど建物の裏手に出たらしい。
 中に入ってみると意外と明るかった。壁が白いのと、ステンドグラスに比較的淡い色を使用しているせいだろう。例によって工事中である。(ここは工事したほうがいいかも・・・と思わせるくらい、周りに異様なオーラを発していたボロさであった。)で「黒いマリア像」だが、「ああ、黒いですね」くらいのものだった。だが、その昔、センヌ川周辺に泥炭を運ぶ船が行交っている頃、その湿気によって黒くなったという由来を読むと、気が遠くなるくらいの時間を経て今の姿があるのだと感心していまう。
 聖カトリーヌ教会の脇に遺跡のようなものが建っている。これは「黒い塔」(La Tour Noire)と呼ばれ、700年前の城壁の一部が残ったものらしい。

 次の目的地、北駅の方へ行こうと地下鉄に戻ろうとした時、目の端にまたまた壮麗な教会が目に止まる。後で調べたら聖ジャン・デュ・ベギナージュ教会(Eglige St-Jean du Beguinage)だった。ファサードの美しさは今回の旅行の中でいった教会の中で最も洗練されていた。中に入ると、余り観光化されていないせいかとても静かだった。入って左側の壁に掛かる、キリストの磔の像とステンドグラスの構成が余りに見事。訪問者ノートが置いてあったのでわざと難しい日本語を選んで書いてきた(^_^;)。しぶは説教台(でいいのかな?)に興味を持つ。確かにどこへ行っても説教台の彫刻は手抜きが無く美しい。書き残してきたことはだいたいこのようなこと。


 キリスト教徒ではないのだが、教会に入るととても崇高な気分になる。普段は考えたこともない神の存在を感じられる。神の教えを中心に生活は出来ないが、なにか支えになる存在を持つこと、感じられる場所を持つことはとても大切だと思う。
 日本には今、畏怖の念を感じられる存在が居ない。ただいる、ただやる、ただ流されるだけだ。若い人が(自分を含めて)他人の命を軽視したり、自分を痛めつけるような行為に走ることと無関係とは思えない。


 この後北駅に向かった。アールヌーヴォーのインテリアが美しい旧・コーン・ドネ邸に行くためである。だがももが日本に地図を忘れてしまい、3時間くらい不毛な散策をした挙げ句、見つけられなかったというオチが付くのでエピソードを抜粋。

((北駅はアラブだった))
 北駅自体は新しく、東側はこれから開発されるような雰囲気だったが、西側はアラブ系の人達によって占められていた。したがってルイーズ通りとはまるで正反対の商店街であった。「アラビアン・ミュージック・ノン・ストップ!」とかかれたディスコがあったり、昼間から不健康なおじさんがたむろするポルノ・ショップがあったり、観光ツアーではお目に掛かれないアヤシサ爆発の地域だった。でも物は安そうだったな。
 線路沿いには窓際にストールがポツンと置かれている店が並んでいる。「床屋かな」としぶはのたまわったが、その後すぐに正しい職種が判明。その椅子は下着姿のおねーさんがしなを作って客引きするために使う物だった。ももはかなりショックを受ける。アウウ。

((英語が通じない!?))
 件の建物を探すためにしぶは行交う人々に「えくすきゅーず・みー」と話かけたのだが、逃げられっぱなしだったという。結局警察にも聞いたのだが、警察でも英語が通じない。わざわざカタコトの英語は話せるジョンさんを呼んでもらい「多分ここだろう」と道を教えて貰った。いや、実に親身になって話を聞いてくれた。英語を操れる人がはたから見ていたら「お前ら学校でなにやってたんだぁ?」と凄んできそうな会話だったに違いない。m(_ _)m

((植物園の近くのカフェ・レストラン))
 地下鉄Botanique駅の近く、植物園(Parc du Jardin)の入り口から道路を挟んでほぼ真正面。すこし奥まったところにあるカフェ・レストラン「シャンブロウ」(スペル失念)。中も小綺麗で、ウェイターの愛想も良い。ここでベルギーにきてはじめてまともに食事をした。フランス語の本にも「食事が分からなければツーリスト・セットを頼めばよろし」と書かれていたので、セットメニューを注文。ベルギー名物ムール貝のワイン蒸しやとろけるような豚のシチューに舌づつみ。幸せ。
 しかし特記すべきはビールである(笑)。店推薦のカステール・ビール(Kastel?)は、舌もノドも喜ぶ大当たりのビールだった。少し甘め、でも飲んだ後も口の中が爽やか。あまりに美味でお替わりまでしてしまった。残念ながら東京では売っているのは見たことがない。ブリュッセル行く機会があるビール好きの人、絶対飲んで!黄色地でお城の絵が目印。
 ただしアルコール度も高めなので、飲み過ぎてトラム(路面電車。市内では地下に潜ってしまう)を乗り過ごすこともあるので注意。(私たちだ トホホ)
 ここのトイレが笑えた。使った後水を流すと同時に便座が回り、タンクの下に設置された、消毒液がついたナプキンの下を通っていくメカニックな仕掛け付きだった。これは驚いた。個人がスプレーとかウェットティッシュを持ち歩いて、まちまちな消毒をやるよりより衛生的だと思いますが、いかがでしょうか?

((また道に迷う))
 うちら、方向感覚がないんだろうか?(いや、これもガイドブックが悪いんだ!)

 昼食を取ったのちオルタ美術館を目指すべく地下鉄Albert駅で下車。出たはいいが、どっちを向いても同じような町並みが続いているので適当に歩く。30分くらい歩いても着かない。とっくに閉館の時間になっていたのだが、場所だけでも確認しようと通り掛かったおばあちゃんに道を聞く。さっきの警察とは違い案内までしてくれたが、何故かフランス語しか話してくれなかった(^_^;)。「オルタはどこですか?」と聞く観光客が実は結構居て、案内には馴れていたのかも?ここにはまた明日挑戦することにする。

((一番簡単に「オルタ美術館」へ行く方法))
 トラム91か92でPaul Janson駅で下車。
スーパー「BRICO」の向かいの道を入る。その右の並びにある。近くにMacの店「CAMI」がある。

#間違っても地下鉄Horta駅で降りてはいけない。でもここの内装設計はオルタがやったんだな、 オルタ邸と同じ鉄製のうねうねした細工が見れる。

 実は「アールヌーヴォーの建物なんて派手だから、簡単に見つかるだろう」とたかをくくっていたのが間違いだった。現役のアパートや店舗でもみんな「アールヌーヴォー風」なのだから。さすが中心地。ただ、オルタ美術館を見て思ったのが、意外と「アールヌーヴォー風」の建物よりは簡素であったこと。ディテールの凝り具合は病気ではあるが、やはり「なんか違うんだなぁ」と思わせるオーラがある。アールヌーヴォーの有名建築専門の地図を購入すると色々回ってみれる。(20BF位か?)

 ホテルに戻り、近所の小便小僧を見学。結構小さい。W杯期間だからか、ベルギーの国旗カラーの帽子を被っていた。そしてまためざとくCD屋を発見。店はもう閉まっていたが、トニー・コンラッド(*1)のCDをディスプレスするあたりタダモノではないと感じ、明日来ることにした。ばか?
ニセモノの小便小僧はここをクリック

 夕食は、ももが気になってしょうがなかったPRIMUSを飲むために、グラン・プラスに面したお店に入る。看板にはビールとかウイスキーとかなにも書いてない。何物だろうか?
 Le Paonという名前の、吹き抜けが楽しいお店。ランチョン・ペーパーがブリューゲルの絵というのも気が利いてる。ここではまたまた名物ワーテール・ゾーイ(鶏肉または魚貝類を野菜と煮込むホワイトシチュー)を頼む。香味野菜がきいていて好みが分かれそうだが私は好きな味。そしてPRIMUSとは・・・ビールであった。ジョッキにも赤に金の縁が付いた「PRIMUS」という字が輝いている。味は日本のラガービールのような、いわゆる大衆ビール。サッパリ飲める。ジョッキをPRIMUSファンの兄の土産として手にいれることを決心した。

PRIMUSビール
真ん中にPRIMUSの文字が入ってます。

 ホテルに帰って、今度は缶ビールを飲む(^^;)。青い缶のMAES PILSはサッパリ目でスーパードライのよう。黄色い缶のGordon(?)ビールは凄く癖が強い。私でも全部飲むのが辛かった。え?飲み過ぎか?

 明日はオルタ邸とマグリット展に行く予定(は倒れるためにある)。



(*1)トニー・コンラッド
  映像作家。件のアルバムはFAUSTと作った「Outside the dream syndicate」


日本 ストックホルム ブリュッセル
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