The Flower Kings

 地球が地軸を微妙に変化させながら自転するように、TFKは表面上変化を続けながら、核には優しい音世界を持ち続けている。しかしその軸が向いてる方向によって、ある人にはINで、ある人にはOUTなサウンドを仕立ててしまうやっかいなバンド。

あの感動のライヴを用事もなく蹴った人、後悔してね!祈・再来日なのです。
2013年1月に待望の再来日が決まりました!
The Flower Kings関連作品へ>>>

The Flower Kingsの詳細は下記:
・バンドのオフィシャルサイトが復活しました
http://www.flowerkings.se/
・日本のオフィシャル・ファンクラブ・サイト。メールマガジン(不定期)の登録もココでどうぞ。
http://flowerkings.web.fc2.com/


☆Roine Stolt/The Flower King (MARQUEE MAR 95156) '95
 本来ソロの項目に入れるべきなのでしょうが、The Flower Kingsはこのアルバムから始まったようなものなので、こちらにしました。
 Vo.の堅さに初めはあまり良い印象はありませんでした。何度か聴いてインスト曲の素晴らしさには「いや〜、こんな曲を流し聴きしてはいかんなぁ」と反省しました。組曲はちょっと散漫かな。後の作品のヒントになるフレーズがすでに幾つか出ています。
 しかしこの作品に関してはパートがどうこう、というレベルではなく、暗黒の90年代によくぞこんなファンタジックなアルバムを作った、というところが大快挙なのです。

☆Back In The World Of Adventures (MARQUEE MAR 95155) '95

 「なにをいまさら」と言われそうですが、やっぱり書いちゃいます。大傑作。私が言うのも説得力はないが、シンフォ・ファンでこれを聴いてない人はモグリだ!
 全体的にたおやかな雰囲気の曲が多いのですが、一定のテンションはキープしていて、静かに燃えるギターの音色にはドキドキしてしまいます。"Theme for A Hero"で泣け!RoineのVo.もソロ名義の前作に比べると堅さが取れて、頼りなさも味にしてます。北欧らしい端正で暖かみのある音像とシンフォニック・ロックの壮麗さの美しい結晶。Saxで参加のUlf Wallanderがいい仕事してます。

☆Retropolis (MARQUEE MAR 96251) '96
 
時間を掛けたからって良いアルバムができる訳じゃない。このアルバムを持って胸を張って言おう。インスト曲の完成度の高さは今更ながら驚きました。でも、もろ"宮殿"したフレーズがあるのは愛嬌ということで。
 北欧シンフォの「Back In The World Of Adventures」と少々メタリックな「Stardust We Are」の間と言えばとてもわかりやすい過渡期の作品。

☆Stardust We Are (Belle Antique MAR-97376〜7) '97
 2枚組攻勢の第一弾。Disc1の1曲目こそストレートかつキャッチーな名曲ですが、以降メタルファンの言う「脈絡のない展開」を含む大曲が並んでおります。いいじゃん、長くったって。Hasse.Bのパーカションが冗長になりがちな曲にアクセントを付けていき、リズム隊のセンスがのよさが長さを感じさせません。そしてTomasが色々なキーボードでちりばめたテーマとRoineのギターが全体を引き締めていきます。聞き込むうちに"Just This Once"が気に入ってしまいました。Vo.がすこしJohn Greavesっぽいから。(^_^;) 他ではあまり聴けないタイプの曲。
 それにしても”Stardust We Are"ですよ!厳かなアコースティックギターとヘヴィーなギターを絡みから美しいストリングスとキーボード。熱っぽいRoineの歌を擁して、曲は北欧の冷ややかな空気を湛えながらドラマティックに展開し、Part.3に行き着いたときにはもう、滝のような涙が流れていることでしょう。長かった旅も終わりよければすべてよし。ちなみに来日公演でも演奏されたこの曲でのHasse.Fの熱唱ぶりは、私の近年のライブ観戦の中でBEST3に入ります。この人の歌はライブの方が100倍いいです。

☆Scanning The Greenhouse (Avalon MICY-1076) '98
 アメリカ進出用に編成されたベスト盤。"The Flower King"と"Stardust We Are(pt3)は再録音されている。おそらくライブで演奏を重ねた上で出来あがったであろう、ヴァイタルな仕上がりになっています。

☆Quebec Limitied Edition 1998 (Ipso Facto IF-9802) '98
 フランス語で挨拶してるし、カナダ・ケベック州のみに向けて発売されたと考えていいでしょう。6曲入りの企画盤CD。"Kite"は名曲です。全体的にあっさり味。

☆Flowerpower〜A Journey To The Hidden Coners Of Your Mind (Foxtrot Records FOX CD 020) '99
                                   (Avalon MICY-9001) 国内盤 '99

 2枚組攻勢の第二弾。オーケストラが参加するは、オペラ歌手は導入するはで大変な騒ぎ。パーカッションがさらにエキセントリックになりました。私、いわゆるシンフォ・ファンではないのでわかりませんが、どこまでが許容範囲なんでしょう?気迫は感じられるけど、とっちらかった感じがして疲れます(^_^;)。もっぱらDisc 2の小曲集を拾い聴きして楽しんでいます。

☆The Flower Kings(Avalon Not For Sale) '99
 「Flowerpower」日本盤に付いてる応募券を同封のアンケートはがきに貼って来日公演の会場に持っていくと、もれなく貰えた3曲入りミニCD。すべてインスト。
収録曲は以下:She Carved Me A Wooden Heart
       Space Revolver
       Jupiter Backwards

☆Alive on Planet Earth (Belle Antique MAR 00543/4) '00
 外盤より¥1,000くらい高いんですね〜!と言いつつも何故か国内盤買ってしまった。それはともかく帯が間違っているぞ(汗)。
 Disk 1は'98のアメリカ・ツアーのLive。一番盛り上がっているのは、Genesisのカヴァー"The Lamb Lies Down on Broadway"だったりしますが。オーディエンスの合唱が凄い(^_^;)。今も心に焼き付いている来日公演のLiveはDisk 2。解説によりますと3/16からの音源がメインらしいです。充実した演奏と歌がとても魅力的です。お値段は高いですが、必聴でしょう。
 内ジャケのベタなショットとトレード・マークになりつつある?着こなしも彼ららしい。チェック柄にチェック柄を重ね着するRoineのセンスが侮れないッス。

☆Space Revolver (Inside Out IOMCD 062 : 限定盤) '00
 
2枚組攻勢は終わったものの、CD収録時間いっぱいのロマンを詰め込んで早くも登場。アイデアが枯れるということがないんでしょうか?
 一聴した印象は「ずいぶん地味になったなぁ」。思えば前作「Flower Power」が異様な詰め込みようだったのですね。あまりに露骨で失笑してしまうYes調のコーラスやギターが減り、「Back In The World Of Adventures」の頃の、シンプルながら知らぬうちに気分が高揚させられる曲作りに立ち戻った感じです。繊細な音作りなので、大音量で聴けない環境の方は是非ともヘッドフォンで。万華鏡を覗いたような驚きがあなたを待っています。
 ベースは脱退したMichael Stolt(音楽関係のコンサルタント業をしているらしい)からJonas Reingold (Midnight Sun, Reingold)に交替しています。彼のフレットレスベースは"Dream On Dreamer"のような新しい世界をもたらしました。前半は割と実験的。従来のTFKの魅力を堪能するには特に8,9,10曲目の流れがお奨め。まるで宇宙をたゆたっているような心地よいサウンド。まさにSpace Revolver。その前奏曲のような7曲目、"You Don't Know What You're Got"やコーラスが美しい"Chiken Farmer Song"も結構和めて好きだったりします。
 今回、Bruniussonさん抑えめですね・・・あぁ、Jaime君のツーバスに消されていたのか。色々変化があったようです(^_^;)。

・Space Revolver日本盤ボーナスCDの感想など・・・
 二昔前だったら、十分アルバムになるボリュームですね。40分テープで収まる。やはり一番印象深いのは"Last Exit"のRoineのギターの音色です。すごく豊かで、暖かみのある音。アレンジもギターを引き立たせるためにある。安直ですが北欧の音って感じです。なるほど、Kaipaの名前が出てくるのも分かります。順番が前後しますが、他の曲の印象は
"The Meadow"---無駄を廃したプレイが見事。Reingoldいい仕事してます。
"A Good Heart"---なんてTFKらしいタイトル。目を閉じて聞き入ると、魂吸い込まれそう。
"Dream On Dreamer(Alt take)"---初めHasse Bの声だと思っていたんですが、Tomasなんですね。渋い声・・・なんですけど、来日公演のあのキャラを観てしまうと、なにかのパロディかしら?と勘ぐってしまいます(^_^;)。
"Venus Flytrap"---なんだかTomasさんを見直してしまった曲。本当に弾ける人なんだなぁ。そして赤ん坊の泣き声が入ると、VAIを思い出してしまうのでした。

☆The Rainmaker (Inside Out IOMLTDCD 085 : 限定盤) '01
 どうなのこのペース!? Roine Stoltの頭の中はどうなってるのでしょう?睡眠とってるんでしょうか?Transatlanticの新作も出たし。
 前作に同様、第一印象は「地味だなぁ」。ジャケの色調も昔に比べて渋めです。前作のような押しの強いインスト曲がなく、初期の作品のような淡い曲調のインストを挟むスタイルが多いです。聴いてすぐ頭に残ったオープニング曲"Last Minute On Earth"とラスト"Serious Dreamer"はVo.の力強さが印象的。RoineのVo.は頼りなさが味だと思っているのですが(^_^;)、今までになく強気な歌い方をしてます。"Sword Of God"のようなヘヴィーな曲ではHasse Fの歌唱が光ります。ライブで聴いたらもっと良いんだろうなぁ・・・。
 このアルバムに関してよく「初期を思い出す、懐かしい感じ」という意見を聞きました。確かに音の密度は初期と同じくらいかも。でも個人的には「Space Revolver」を通過してこそできた作品だと思います。初期のストレートさと、「Stardust」以後のカラフルなテクスチャーがうまく調和した感じ。調和した分、引っかかりがなくマイルドな感触が「地味だなぁ」と思わせたのかもしれません。
 曲のイニシアティヴがキーボードに移り(キーボードの音色の多彩さは一聴の価値有り!)以前のような情熱的なギターソロが減ったのは少し寂しいかな。このアルバムを最後にJaime Salazarが脱退(T_T)。
 Disc 2にはボーナスが6曲と映像が入ってます。"Violent Brat"では新しいドラマーZoltan Cso¨rszが叩いてます。Jaimeの後を引き継ぐだけあって、若いながら並の技量ではなさそうです。映像のエフェクトがウザいんですが、動いている彼らを観るのは今では貴重ですね(涙)。Roineは殆ど映ってません(一瞬だけアップがあるよ)。

☆Unfold The Future (Inside Out IOMACD 2047 : 限定盤) '02
 もはや秋の恒例行事と化したTFK新作発売。一挙に関連作品も出してくれちゃって、お財布が痛かったです(^_^;)。
今年はTransatlanticがなかったせいか再びの2枚組攻勢。欧州限定盤はボーナストラック1曲追加のデジパック仕様。

 第一印象「YESだなぁ(笑)」。第二印象「シンフォだけどロックじゃないなぁ」。
それから少し時間を空けて聴き直しましたら、曲が格段に洗練されていて良い感じ。でも今ひとつ足りない。それが何故なのかずっと考えていました。
 初め違和感を感じていたのはDaniel Gildenlow (Pain of Salvation)のゲスト参加と、ドラマーの交替。これはミスマッチだ、というより、もっと個人的な嗜好(及びHasse F.ファンの私情(^_^;))の問題なので、聴き慣れていけば、いつか解決する問題(多分)。それでも"Fast Lane"は、後半部分だけでもHasse.Fを絡めた方がスカンと抜けた曲調に合っていたと思います。Hasse、レコーディングの時に外せない会議でもあったのか?
 次に思いついたのは、某掲示板で自分が書いたことですが「Falling Into Infinity」時のDream Theaterに近いのかな、ということ。この頃のDTは、ヘヴィな曲から売れ線の曲までヴァラエティに富んだメタルソングに、ありったけのテクニックを注いでおりました。「売れたいのか、実験的にしたいのか、何がやりたいのか今ひとつはっきりしない。何か一本筋を通すべき、というかコンセプトがないよねー」と友人と語りあったこともあります。その後「SFAM」がリリースされて驚きましたが、この時言っていたコンセプトはいわゆる「コンセプトアルバム」のコンセプトではなく、作曲時のポリシーというか、そんなものでした。(後にMike Portonyが語るには、「FII」の頃は外野がうるさかったらしいですね。)
 これをTFKに当てはめてみます。シンフォニック一辺倒でもないし、完全にジャズロックへ寝返ったわけでもありません。突然トロピカルになったり、相変わらず謎なSEや雄叫びが曲を飾っています。一つ一つを取り上げればTFKなのだけど、傾向がバラバラなそれらの要素をつなぎ合わせるリングが何なのだと考えてみると、やはりRoineのギターであるべきだと思いました。
 ミックスのせいかベースとキーボードがかなり全面に出ています。ベースの音量がでかいくらい何でもないですが(イヤならRushが聴けるか(暴言))前作「The Rainmaker」でも影が薄かったRoineのギターが隠れてしまっています。勿論"Genie in a Bottle"のバッキングや"Grand Old World"のアコースティックギター、"Devil's Playground"などかっこいい場面もあります。でもTFKファンが望むRoineのギターは、魂を鷲づかみにして天空に放り上げられてしまうような、もっと強烈なギターソロ、ロングトーンではないでしょうか?"The Truth will Set You Free"の24:36辺りののロングトーンがあと2秒長かったら・・・何か惜しい・・・。こんな凄いバンドを率いてて、一人だけ枯れるなんて早すぎるよ。しかも一番良いプレイがボーナストラックってどういうことですか(^_^;)?
 あと中だるみを感じてしまう原因として、インプロ曲が多いこと。"Devil's Danceschool"辺りをハイライトとして、他の曲はもっと時間を絞るべき。たとえばDisc 2の前半、"Soul Vortex"が半分くらいだったら、流れが完璧だったと思う。ドラマーが変わってインプロも強力になったことをアピールしたいのだろうけど、スタジオ盤らしい聞かせ方があるんじゃないだろうか?
 これも個人的趣向の問題だと思うけどもうひとつ。ベースの音がでかい割に重さが足りない。これが第二印象の感想に繋がったと思います。その原因がドラムなのか、ギターなのか、はたまたミックスのせいなのかよく分かりません。でも近作に「プログレメタルっぽくてヤダ」という印象を持った人には、今作はいいんじゃないでしょうか。

 文句タラタラ言っていますが、傑作だと思います。テクニック的にも充実し、シンフォというカテゴリーをとっくに超越して、新しい領域に入ったと思います。以前にはなかった色気も感じられますし。一長一短かなぁ・・・フラワーチルドレンが夢から覚めて、大人になった感じ?

☆Adam & Eve (AVALON MICP-90017) '04
 「あぁ、ドリーミーな音が帰ってきたなぁ」コレが第一印象。そしてようやく初心者にも勧められそうな最新作が出てきましたね(^_^;)。ここ数作では奥に引っ込みがちだったRoineのギターはメロディと力強さを取り戻し、私が好きだったRoineのギターとTomasのキーボードがお互いにテンションを高め合ってクライマックスに持っていくアレンジが戻ってきたのが嬉しかったです。かといって懐古的な音ではなく、しっかりJonasとZoltanのリズム隊がテクニカルなプレイでバックを固めています。ライブを見てからZoltanのプレイがすんなり入ってくるようになりました。キレがあってカッコイイです。それにTomesのKeyがとてもキュート。とにかく"Love Supreme"、特に中間部から後半にかけての展開には参りました。和声にYesを強く感じてしまうのが人によってネックかもしれませんが、ポジティヴなパワーに満ちあふれた好作です。

 と、他人のページのために書く文章だったら上部で切ります。ここからは完全に私感です。
インスト隊の充実振りに反して、Vo.アレンジに物足りなさを感じました。今回面白いと思ったのは"Love Supreme"の中間部と"The Blade of Cain"。"Cosmic Circus"は別格(^_^;)。パフォーマンスそのものに不満はないのですが、「Unfold the Future」の"Rollin' the Dice"みたいな意外な采配があってもよかったのではないかと。(あれは「ふたりの王女」における月影先生の配役並のインパクトがあった。って「ガラスの仮面」を読んでない人は分からない話)
 現在Hasseの歌うパートはほぼ固定されていて、以前だったらRoineが歌うパートの、割とハードな部分をDanielが受け持ってる感じです。HasseもDanielも他のバンドでリードVo.をはっている実力の持ち主ですから、もっと多様な表現が出来るはずです。私はRoineの歌もわりと好きですが、Hasse、Danielにもっと任せても良かったのではないかと思いました。大曲の中間部でしめやかにRoineのVo.が入る展開はお決まりパターンで、変化が欲しいところです。個人的には"Timeline"をHasseのVo.で聴いてみたいです。淡々と歌うRoineの"Vampires View"も面白そう。もっとも今回の作品に「意外性」は無用な要素かもしれませんが・・・。
 あと"Love Supreme"は5分半辺り、Voラインが一段落したところから12分過ぎ、RoineのVo.が入ってくるまでの7分くらいごっそり抜き、歌詞を整理してヴォーカル中心の曲として11,2分くらいにまとめた方が聴きやすく、曲のインパクトが強くなったのではないかなぁと思ったり。歌メロが極上なのに小刻みにミニソロプレイが入ることによって、歌の良さを殺してしまっている感じがします。「惜しい」感が一杯です。なぜ"Love〜"に執着するかというと、この曲にバンドの未来を見ているからです。

☆Paradox Hotel (Belle Antique MAR 061124-5) '06
 「初期を思い起こさせる」と言われてもあまりトキめかなかったと白状しておこう。だって私が入れ込んでるTFKは「Space Revolver」以降だもん、今更戻られてもねぇ・・・コミカルなメンバーの似顔絵を眺めつつ、辿り着いた世界は知っているようで新しい世界でした。「Wall Street Voodoo」で思う存分自分が弾きたいスタイルを弾き倒したRoineのギターは完全にパワーを取り戻し、ロマンティックなロングトーンをこれでもかと聴かせてくれます。"Blue Planet"のギターは「Back In 〜」の頃を思い起こさせるし、"Touch My Heaven"はKaipaさえ彷彿させます。でも曲そのものを眺めてみれば「Adam & Eve」までの要素を充分に含んだ作品だと気づくし、今までになかった要素も。特に制作面では、スウェーデン国外でレコーディングされたことと、今までスタジオではヴォーカルしか担当していなかったHasseがギタリストとしても参加していること。この二点は、Roineが自宅で「緻密で完璧な」音作りを止めて、新しい風を入れる試みのように思えました。実際、この作品にはいつものような満腹感(^_^;)はあまりなく、開放感があります。それに新加入のドラマーMarcusは、Zoltanに比べるとテクニカルなプレイは少ないけど、一打一打の存在感が大きく、ジャズ寄りになっていたリズム隊をロック側に引き戻してくれたようです。メンバーそれぞれが役割を完全に理解し、持ち味を存分に出しつつTFKの曲を気持ちよさそうに演奏している、このライブ的な雰囲気は、彼らのスタジオ盤では今までなかったんじゃないだろうか。"Pioneers of Aviation"の躍動感溢れる演奏はどうですか!
 Disc1はRoine作曲の作品が中心で、Disc 2は他のメンバーの曲や共作が目立ちます。今回私が特に注目したのはJonas作曲の"Man Of The World"(Tomas、Roineと共作)と"What If God is Alone"(Roine、Hasse.Fと共作)。Karmakanicの「Wheel of Life」でも聴ける伸びやかなメロディラインがここでも活かされていて、これがHasseのソフトな声と良く合います。特に"What If God is Alone"のサビの展開の妙にはガッツポーズを取ってしまいました。あと"Life Will Kill You"や"Paradox Hotel"で、Hasseのハードロッカーな面がアクセントになっています。これは個人的に盛大に嬉しい。
 このバンドが少しでも好きなら聴くべき作品。2枚組だが初心者にもお勧め。初めてジャケ画像も入れちゃう。


☆The Road Back Home (Belle Antique MAR 071282-3) '07
Roineがリマスター/リアレンジなど、全ての曲に何らかの手を施した、バンド初のベストアルバム。(「Scanning the Greenhouse」は違うのか?)。聴きやすくなった曲もあるのですが、個人的に思い入れの深い曲は、あまりいじらないで欲しかった、と言うのが正直な感想。元の音源に別の時期の音をかぶせるのではなく、"The Flower King"や"Stardust We Are (pt3)"のようにリ・レコーディングしてくれたら、もう少し違う感想になったと思う。Disc2の"Little Deceiver"は「The Rainmaker」頃の未発表曲。そのアルバムには合わなかったかも知れないが、Hasseの優しい歌声が気持ちよい。
収録曲は以下:
DISC.1
1.Cosmic Lover
2.A Kings Prayer
3.Stupid Girl
4.Cosmic Circus
5.Babylon
6.Paradox Hotel
7.World Without A Heart
8.Church Of Your Heart
9.Vox Humana
10.What If God Is Alone
11.Starlight Man
12.Grand Old World
13.The Road Back Home
14.Cinema Show (Full Version)
DISC.2
1.Ghost Of The Red Cloud
2.Painter
3.I Am The Sun (p2)
4.Different People
5.Little Deceiver[*]
6.Chickenfarmer Song
7.The Rhythm Of The Sea
8.Touch My Heaven
9.Life Will Kill You
10.Monkey Business
11.Compassion
12.The Flower King
13.Stardust We Are (end section)


☆The Sum of No Evil (Belle Antique MAR 071308-9 Special Edition) '07

 このページのトップを再度読んでください。どうも私にとって「OUT」な作品が来てしまったようです。ホント、どう楽しんでいいのか分からなくて呆然としてます。

☆Banks of Eden (Belle Antique MAR 121980-81) '12
 前作から約5年ぶりに発表されたアルバムで、収録時間なんと55分。1曲じゃないよ(笑)。とはいえ、オープニングの"Numbers"は25分もある大曲で、全5曲入り。限定盤に付いてくるボーナスディスクには更に4曲(+インタビュー動画)収録されている。
 結局前のアルバムに馴染むことが出来ず(汗)、先にインタビュー動画を観てから、おそるおそる聴き始めた。大きなインパクトはなかったけれど、何かが元に戻ったと感じた。まず、Roineのギターの音が前面に出て、ベースはあまり派手なプレイがない。歌心というか、メロディーが戻ってきた。まず私は「Back In The World Of Adventures」頃のバランスを思い出した。数作前からRoineは「原点回帰」みたいなことを言っていたと思うのだけど、この作品こそ本当に「原点回帰」のアルバムになったようだ。とにかく今作は、Roineのギターが素晴らしい。バンド内の力関係が以前と同じだとは思わないけど、このアルバムのアレンジでは、ギターと歌が中心にあって、他の楽器がそれをもり立てたりバックアップしたり、という感じ。バンド内で競い合っているような緊張感がなくていい。
 とはいえ、まったく昔に戻ったわけではなく、新しい要素も聞こえてくる。まずは新加入のドラマー、Felix Lehrmannのヘヴィなドラムだ。歴代のドラマーに比べてかなりのパワーヒッターで、キレイにまとまりそうな曲に野性味を与えている。好き嫌いが出そうだが、このバランスは今までなかったかも。そして、ヴォーカルラインのヴァリエーションが増えたように思う。TFKファンクラブでHasse F.にインタビューをした時、「(バンドが休んでいる間に)他のバンドをやっていなくても、同じような音になったと思う」と彼は言っていたが、自分はそうは思わない。Hasse F.とJonas Reingoldが自分たちのバンド活動をしていたこと、RoineとTomas Bodinが違うヴォーカリストと仕事をしたことは、歌メロに影響しているように感じた。
 しかし、大きくみれば、やはり安心して聴ける花王印のシンフォ・ロック。壮大なスケールを感じさせる世界観の中に、Tomasの創造性豊かなサウンドに包まれ、Hasse F.の穏やかなハイトーンヴォオーカルと、Roineのブルージーで枯れた味わいのギターが入れば、ひれ伏してしまうのだ。"Rising the Imperial"なんて、名曲"Big Puzzle"に迫る素晴らしいギターソロで、久々にガッツポーズが出ましたよ。それでも前作と、些細なバランスの違いだと思うのだけど…我ながら不思議だと思う。(前作はブルーズな要素はとても少なかったので、元々ハードロックな私には、そこが辛かったんじゃないかと思ったりするが。)
 ボーナスディスクに収録されている曲。"Illuminati"はギターが中心のインストで、Roine、Tomasが割と伝統的なスウェーデンProggを演奏する中、Jonasのフレットレスベースがいい味をだしている。"Fireghosts"は「Quebec Limitied Edition 1998 」に入ってそうな、牧歌的な歌。周囲では"Going Up"の人気が高いのだけど、個人的にはあんまりピンと来ない(^_^;)。"Lo Lines"は、Roineのソロ「Wall Street Voodoo」にありそうな、シンプルなロックチューン(と、うろ覚えで言ってみた)。

☆Desolation Rose (InsideOut 0506670) '13
 翌年にニューアルバム、という従来のペースに早くも戻ってしまったTFK(笑)。Roineのインタビューや、他のメンバーの証言によると、今回はあまりアイデアを練らない状態でスタジオ入りしたようだ。コレが吉と出たのか、凶と出たのか、自分にはちょっと分からない。というのは、過去の曲を思わせる場面が多かったからだ。使い回し、とまでは言わないけど、「これどこかで聴いたよね」という場面が多かった。多分あまり作り込まない分、手癖とか好きな展開などが、ストレートに出たのではないかと思う。"Desolation Road"は初めて聴いた瞬間に"Train to Nowhere"だと思った。その時はネガティヴな印象はなかったのだけど、一度「これは○○っぽいよね」と考え出すと、あら探しが止まらなくなって、聴き込むほどにモヤモヤが大きくなっていった。曲のモチーフをアルバムの至る所に絡ませるという演出は、TFKでは珍しくないけど、今回は(私にとっては)ただの使い回しみたいに聞こえて、「もはやアイデアが尽きたのか…」くらい考えたさ。"Tower ONE"の、RoineとTomasが絡むメインフレーズ(1:26あたり)なんか、あまりに単純すぎません?
 でも、このアルバムを「駄作」と言い切るには、美しい瞬間があまりに多くあって、それが強烈に私の心を打つので、とても「嫌い」なんて言い切れないのだ。
 そして、全然新しいことがないわけでもない。Jonasが持ち込んだ"White Tuxedos"は、大きく二つしか展開がないが、従来のバンドの曲を考えると、逆に新鮮だ(ギターソロは"Eye of the World"みたいだけど)。"The Resurrected Judas"のスローな曲調にラテン風味の味付けがあるのも面白い。今作のメインに据え置いても良いくらい美しい"Desolation Road"は、あっけなく4分で終わってしまう。Hasseのヴォーカルがドラマティックで素晴らしいので、8分くらいの曲にして欲しかったところだけど、あえて短く仕上げたのならば、これはこれで新しい試みだと思う。「アルバム全体が1曲のようだ」という意見をネットで見かけた。その観点から聴くと、"Desolation Road"が短く、"Silent Graveyards"というリプライでアルバムの大部分で挟む構成は、分からなくもないかな。
 各メンバーのパフォーマンスは勿論文句なく、特にHasseのヴォーカルは、今までで一番TFKの世界に馴染んでいるように感じる。"Silent Graveyards"のラストは、まぁ、アレですが(笑)。Felixのプレイは、前作の方が派手に目立っていたと思うけど、"White Tuxedos"の後半の熱狂的な演奏もあるし、ライブで観たらすごそうだ。Tomasが今作でやっていることを、まだ捉えきれない。それが出来たら、このアルバムを素直に「好き」と言えそうな気がする。ずっと聴いていて疲れない音色は好き。
 あなたが初めてTFKを聴くならば、このアルバムは最適と思う。「過去に云々」という先入観はないし、過去の膨大な作品や、30分とか50分の曲を聴き通さなくても、TFKの美味しい部分は全部揃っているから。
 ボーナスディスクは、Roineのギターがとにかく好きだったら楽しめると思う。唯一異色なのが"Runaway Train"で、Echolynみたいなコーラスアレンジが聴ける(笑)。新鮮。


 Official Bootlegですよ

☆Live in New York Official Bootleg (Belle Antique MAR 02772) '02
 
元々はFlower Power及びライブ会場での手売りでのみ入手可能な、ファン感謝企画のライブアルバム。音源はPlantationを通じて、ファンが録音したモノをRoineがミックスし直したもの。オーヴァーダブ一切無し(らしい)。この頃のライブはRoineの意向でわりとスローテンポで演奏される傾向がある。個人的には丁寧に演奏されていると好印象を受けた。ドラマーがZoltan Cso¨rszに変わってから、TFKはインプロを積極的に取り入れており、このCDでも聴くことができる。
 スタジオ盤の"Garden Of Dreams"はいまだに面白さが分からない自分であるが(^_^;)、ライブ盤のダイジェスト+インプロヴァージョンは余計な装飾が取り除かれているようで、結構楽しめてしまった。実はライブをやりながら曲を練り上げていくタイプのバンドなのかもしれない。近作では引っ込みがちなギターが前に出てきているのも嬉しい。確実にTFKの「今」を伝えているライブ盤だと思う。ちなみにジャケはサザンロックっぽい(笑)。

☆BetcaWannaDanceStoopid!! (Belle Antique MAR 04979) '04
 殆どJamで進行するのライブ盤。真のマニア向き。流して聴く分には気持ちいい。

☆Circus Brimstone / Brim Stoned In Europe (FOXTROT FOX CD 026) '05
 2005年春に行われたTFKインスト隊(通称:Circus Brimstone)ヨーロッパツアーをパッケージしたライブ盤。珍しく60分台だ(笑)。3代目ドラマーのMarcus Liliequistはこのツアーから参加。普段のTFKのライブでは聞けないRoine、Tomasのソロアルバムからの曲や、懐かしい"Magic Circus of Zeb"、"Retoropolis"など収録。まったり聴けてなかなか良いんじゃないでしょうか。

☆Carpe Diem -The Flower Kings Live in USA (FOXTROT FOX CD 028) '08
2008年リリースのオフィシャルブート。ライブ向けの曲が揃った「Paradox Hotel」ツアーから、2006年10月16日、カリフォルニアWhittierでのライブ。ボーナストラックはQuebecでのライブ。
アートワークはRoineの息子Sebastianによるもので、タトゥーのデザインっぽいイラスト。"Just This Once"をライブで聴けるのは珍しい。所々に施されるジャジーなアレンジが良い感じ。"A Vimpire's View"では、すでにDaniel Gidenlowが脱退しているので、RoineをメインにHasse F.とヴォーカルを分け合っている。Danielの方がドラマティックだけれど、とつとつとしたRoineの歌い方も、この曲には合っていると思う。
1. Paradox Hotel
2. Psycedelic Postcard
3. Hudson Rivers Sirens Call
4. Fish Soup (Drum & Bass solo)
5. Pioneers of Aviation
6. Just This Once
7. World of Adventures
8. A Vimpire's View (Bounustrack)

☆Meet The Flower Kings (Belle Antique DVM 019-20 :DVD) '03
 以前から「出る出る」といわれてようやく出た映像作品。「Live Recording」と書かれているが「Live Show」ではない。演奏には文句の付けようがないのだが、映像ならではの気になった箇所が幾つか。すでにネット上の掲示板などでで感想が上がっている通りカメラワーク(あるいは編集)に不満。Zoltanから向かって右側、なかでもTomasはもうちょっと映しどころがあったのではないだろうか。私はHasse.Fファンなので彼が多く映っているのは嬉しいんだけど、それでも「いまはHasseを映すところじゃないだろう!」と画面に向かって突っ込んでしまった。あと曲と曲の間に挿入されるオフステージの映像がダラダラ長すぎる。もう少し短く編集するとか、英語の字幕を入れるとか(メンバーは大部分スウェーデン語を話しているので)工夫が欲しかった。CD盤も出ているので、人によってはそちらで楽しんだ方がストレスが少ないかもしれない。
 とはいえ。バックステージの様子や、男4人がカフェでそろってパフェ食べてたり、ヒゲソリを手に裸でにこやかに立っているキューピー兄弟がいたり、こぼれ話的なモノが好きな人にはそれなりに楽しい映像も入っている。
 今度は本当の「ライブ」でお願いしますよ。

☆Instant Delivery (Belle Antique DVM 046-7 2DVD+2CD)'06
 そうしたら本当に作ってくれました。偉いぞ!「Paradox Hotel」ヨーロッパツアーの最終日、オランダ・Tilburgの公演を収録した作品。元気のいい新作からの曲が多く演奏され、現役のロックバンドとしての活気か感じられるのがとても嬉しい。カメラワークも「Meet The Flower Kings」に比べると自然な感じ。
 オープニングの2曲"Paradox Hotel"と"Hit Me With A Hit"ではHasseが大暴れしてるし、ノリがハードロック過ぎて「バンドが変わっちゃったんじゃないか?」と心配されるかもしれないが、ちゃんと"Jerousy"や"Pioneers Of Aviation"などRoineが聴かせる場面もあるのでご安心を。
 TFKのライブで、アルバムと比べて不満なパートがあった。一時期Daniel Gildenlowがメインにバッキングに大活躍していたけれど、メインの二人(RoineとHasse)が頑張っても、アルバムの美しいヴォーカルハーモニーが再現されないのが歯痒かった。しかし今回のツアーからMarcusと、今まであまり積極的にマイクは取らなかったJonasやTomasまで歌うようになったのだ。"What If God Is Alone"や"End On A High Note"のゴージャスなハーモニーは、来日時の4人Vo.編成を思い起こさせるが如く素晴らしい。逆に少し残念なのは、"Love Supreme"〜"The Truth Will Set You Free"のメドレーは2曲を切って繋いだだけで、冗長気味になってしまったところ。インプロに頼るだけじゃなく、イントロを少し短くするとかアレンジ上の工夫が欲しかった。(こうゆうのはRushがいつも上手くやっている。)
 個人的なハイライトは"Life Will Kill You"で(^_^;)、HasseがPhil Lynottの様な語り口調からスキャット、そこにRoineのブルージーなギターと掛け合うシーンは「プログレ」なんて冠いらんわ!という感じでステキだ。『「Paradox Hotel」はシンフォより70年代ロックにシフトした』という意見を読んだことがあるけど、こういうライブシーンを見せられると納得してしまう。

☆Tour Kaputt (Reingold Records DVD 001) '11
 2007年「The Sum of No Evil」ツアー、オランダ・Zoetermeerでのライブの模様を収めたDVD。Pal方式のため、日本盤は発売されていない。同公演の2枚組CDはBelle Antiqueからリリースされている。DVDは未見なので、CDを聴いた感想を書くことにする。このツアーではPat Mastelottoがドラマーを務めていた。"Hudoson River Sirens Callや"Retropolis"など、インプロの要素が強い曲ではそれ程気にはならなかったけれど、"There is More〜"など、お馴染みの曲では「ココを決めて欲しい!」という曲のキメをことごとく外されて、プレイスタイルもバンドにあまり合ってないと思うし、とてもモヤモヤしてしまった。そんな中、全然仲良くなれない「SONE」からの"The Sum of No Reason"だけが、すっと耳に入ってきて、やっと「あれ、もしかして良い曲かも?」と思えたことが収穫だった。これがPatの功績かは分からない(^_^;)。いまだにこのアルバム、聴けないんですけどね…。上の有頂天な自分が非常に懐かしいですね(汗)

☆1999年3月15,16日 渋谷On Air West
CD聞き込み期間1週間にも関わらず、私を花王の僕にしたライブのレポートはここから

☆2004年5月27-29日 Sweden XXXL Mini-Tour
スウェーデン旅行記とライブ観戦記。音楽的にはまったく参考にならない文章はここから

☆2005年6月4日(Los Angeles) & 6日(Tampa)
言いたい放題、オレ様なライブレポ対談はこちら。(読むと後悔すると思う)4日 6日

☆2006年12月8日(Rotherham)&10日(London)
イギリス(主にロンドン)旅行記とライブ観戦記。相変わらず錯乱している文章はここから

☆2012年6月8日(Sweden Rock Festival)
再始動一発目の、感動のライブはここから

☆2013年1月11,12日 川崎Club Citta'
14年ぶりに再来日を果たしたTFKのライブレポはこちら。11日 12日

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