The Flower Kings Live Report
2013/01/11 at Club Citta' Kawasaki

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 14年ぶりに来日したThe Flower Kingsの、うっとおしいライブレポです。基本的にTFK来日希望・簡易版に掲載した物を同じですが、もう少し、いらない突っ込みとかミーハーな感想が入っています。

 アンビエントなシンセサウンドが流れ出すと、閉じたままの暗幕に「Banks of Eden」のアートワークが映し出された。いよいよ14年ぶりのTFK日本公演が始まる…その瞬間をようやく迎え、自分が演奏するわけじゃないのに、すごくドキドキしていた。

 幕が開くと、ステージ中にオレンジの風船、オレンジ色の衣装をまとったフロントマン3人。下手に横を向いたドラムセット、右側にキーボードセット。おごそかに"Numbers"が始まった。テンポはゆったり目で、ちょっとギターの音が聞こえ辛い。Roineも少々歌いづらそうな感じに見えたが、長旅の疲れがまだ残っていたのだろうか。続いてHasseの歌が入る。割と落ち着いた感じに見えたけど、気合いが入っているのは伝わってきた。中盤まで淡々とした展開の曲だが、それにアクセントをつけるFelixのドラミングが楽しい。パワフルなキックと、意外性のあるフィルインで、ぐいぐい曲を牽引していく。"Look around you-"とRoineが歌うところで少し曲調が落ち着いた後、ワタクシ的この曲のクライマックスがあって、Roineが"And now that she's gone- She brought the darkness down"と歌った後に、Hasseがシャウトするところ。スタジオ盤でも「うっしゃー!」となる場面を、ライブでもHasseが気持ちいいシャウトを決めてくれて、今日のライブは絶対上手くいくと勝手に確信した。曲の中盤でもRoineのヴォーカルはいまいち決まらなかったが(モニターが悪かったのか?)、ギターの音は段々整ってきた。Tomasの奇妙なサウンドスケープが会場に響く。おそらく、このバンドを「シンフォニック」にしてるのは、TomasのKeyなのだけれど、押しつけがましくない音作りなのがいい。それでいて、なくてはならない存在感を放っている。その上でRoineのギターソロが奔放に駆け回るのだ。あぁ・・・至福である。Jonasのベースは、屋台骨としての役割だけでなく、時々曲の鍵になる、印象的なフレーズも奏でる。終盤、ヘヴィなベースのリフとドラムからギターソロ、それからブレイク。アタマ1拍抜いたアレンジがニクい。その後にベースペダル?のサウンドソニックが観客を直撃(笑)。私はここのヴォーカルハーモニーが終盤の肝だと思っているので、それが引っ込んでしまったのが少し残念だったが、すごいノリノリなTomasのプレイと(あんなに彼が頭振ってるのは見たことない)と、力強いギタープレイは、それを補って余りあるものだった。"Numbers"は、みっしり音が詰まった超絶技が飛び交う曲ではない。無限に広がる空間の中に、あちらこちら、ベテランならではセンスの良い技が散らばった、「Banks of Eden」のジャケットアートのような世界観を持っている曲なんだなぁと思った。

 RoineのMCとメンバー紹介。次の曲に行くカウントをFelixがシャウトするときに、声がひっくり返ってしまう(笑)。"For the Love of Gold"では、Gold Topのレスポールに持ち替えたHasseの、清々しいVo.が堪能できた。気持ちいいミドルテンポに踊るRoineのギターと、澄んだTomasのキーボードサウンド。そこにFelixのスネアが強烈にアクセントをつけていくのだ。もうなにこの幸福感。
 その次、すかさずホーミーのサンプリング。"Last Minute on Earth"だ。ヘヴィなイントロに導かれて、Hasseの声が高らかに響く。そしてベースペダル攻撃ドーン(^^;)。いやー、これなんでしょうね。座席の位置が悪かったのかな…。ヴォーカルパートがいったん終わり、Keyをきっかけにインストパートへ。ギターの音がすっかり消えてしまったのだけど、Tomasの熱いソロでカヴァー、テンポが落ち着いた後はRoineのギターが復活し、伸びやかなソロを披露。そのバックで、Jonasがかっこいいフレーズを弾いてるんだよね。再びHasseの歌が入って、腰に手を当ててポーズを決めながら歌ってるのが良かった(笑)。
 Jonasが弾くメロディーから、ヘヴィーなキーボードハーモニーと共に"In the Eyes of the World"に突入。ライブではおなじみのメドレーだ。どっちの曲もライブ向けなので、すごくハマってる。Roineのちょっと感情がこもったVo.もいいし、その後のHasseのスカーンと抜けるハイトーンヴォイスも決まって、曲はノリノリなままエンディングへ。Hasseもノリノリで風船をキック!私が一番はじめに覚えたTFKの曲なので、過去に何度もライブで演奏されている曲とは言え、やはり聴くと嬉しい。
 続いて、Jonasが静かにリフを刻み、それにFelixが乗ってくる。他のメンバーはステージから去っていた。ドラムの座にZoltaが居た時も、Marcusが居た時も、リズム隊のジャムセッションがあった。それぞれ違う個性を持つドラマーだけれど、それに柔軟に対応しつつ見せ場を作るJonasの能力の高さ。(そして妙なポーズで笑いも取るし)。それからTomasがやってきて、鳥のさえずりのような音色で"Babylon"のイントロを弾き始めた。キーボードについてはまったくわからないし、自分はギターメインの音楽が好きなんだけれど、Tomasの音作りには本当に感心してしまう。そのうちRoineも入ってきて、じわじわと、そしてダイナミックに盛り上がってエンディング・・・が・・・Roineがギターの音をなかなか消さないので、観客が拍手をしていいのかどうか迷ってしまい、変な間が出来てしまった(笑)。Roineも多分「あれ?」って思ったのでは。とりあえずMCで繋ぐ。チューニングをしつつ、「長い曲を作るのが仕事なんだ」とか「僕たちスウェーデンから来たんだよ、アメリカじゃないよ」とか、妙な雰囲気が漂ってて面白かった。Roineっぽいなぁ。「なんか音鳴らしてよ」とRoineがいうと、Tomasが歪んだオルガンの音を「ガーン」と鳴らした。それにHasseがシャウトと掛け合って、まるで70年代のDeep Purpleみたいだ。そして"Paradox Hotel"へ。Hasseのマイクにみょ〜なエコーがかかっていて、カラオケみたいだなぁって思ったけど、なんだったんだろう?それにしてもこの時は、情熱的な歌唱といい、Roineとのギターの掛け合いといい、短いヴォーカル・インプロも聴けて、ハードロックHasseのハイライトだった。まさに「Hasse様タイム」。オレ、大満足。

 盛り上がったところで、クールダウンを促すような、涼やかなキーボードサウンド。ここまであまり、ステージのバックドロップの映像をあまり見ていなかったのだけど、このキーボードソロと映像のコラボはよかった。雪山から一転、コンクリートジャングルに場面が移るのと、荘厳な雰囲気の音からダンサンブルなリズムが入ってくるのと、実によく合っていた。アンビエントな感じのは、いままでもあったと思うんだけど、Tomasがいかにもキーボーディストなキーボードソロ弾くのを見るのは、とても久しぶりのような気がする。いつも音色に気が行ってしまうが、技術的にも高い物を持っている人なんだというのを思い出させてくれた。
 そして、しっとりと静かなピアノのイントロから"Stardust We Are"へ・・・14年前、この曲をライブで聴いてTFKのファンになったのだ・・・。海外で何度も聴いたけれど、再び日本で聞くことが出来て、本当に嬉しかった。「僕らは星屑」。数年前、NHKで宇宙関連の番組で、ある学者が言っていた。ビッグバンから素粒子が生まれ、ダークマターによって集められ、水素、ヘリウム、どんどん原子が融合し、銀河になり、星になり、その中の一つ、この地球で人間という生物体として生きている。本当にみんな同じ星のかけらから生まれたんだと。まさに「Stardust We are」だなぁ、と妙に感銘を受けた。この曲を聴くと、ちっぽけな身体の中に大いなる宇宙の広がりを感じられるようで、それが懐かしいようで、ちょっと涙目になってしまう。HasseのVo.は相変わらず素晴らしかった。この曲においては、Hasse以外のヴォーカルは考えられない。
 冷ややかなキーボードのメロディと、ベースのつま弾きが絡み合い、Felixがカウントを取ると、Roineが"Rising the Impelial"のイントロを弾き始めた。「Banks of Eden」のエンディングを飾る名曲だ。Roineのマイクのエコーがちょっと強くて、再び「?」と思ったが、サウンドエンジニアが試行錯誤してたのだろうか。スタジオ盤ではInga Ohlen-Reingold(Jonasの奥さんですよ)が時々美しい声を響かせていた。あれをサンプリングで鳴らすのか、誰かが代わりに歌うのか気になっていたのだけど、この日はJonasとHasseが少しずつ(全部ではない)歌っていたのは確認できた。曲の中盤、FelixのフィルインからRoineのギターソロに入るところは鳥肌もので、ロングトーンだけで、どうして人を震えさせられるのだろうと、本当に感心。この時点で、ワタクシかなり涙目。それに続くHasseの熱い歌唱も感動的に決まり(最後のハイトーンが決まって良かった!)、曲は大団円へ。メンバー紹介をして、バンドはステージから去って行った。いやー、こちらこそ"We love you all"だよ!

 アンコールがあって(時々「ロイネー!」と叫ぶ声あり)、バンドがステージに戻ってきた。「僕たちは長い時間旅をしてきたし、君たちは長い間待ってたから、長い曲を演奏するよ」というMCがあって、Tomasがぽや〜んとキーボードを弾き始めた。音は徐々に輪郭を持ち始め、ベースとギターが乗ってきて、"I am the Sun"が始まった。今やTFKを代表する曲だ。SRFの時は転がりまくって、外れてしまうこともあったFelixの手数の多さは、きちんと収まり、見事な推進力になっていた。ライブの間、ちょこちょことメモを取っていたのだけど、この曲の時は、雄大な流れに身を任せて身体を揺らすことを楽しんでいた。TFKのライブはいつも圧倒されるとか、感動するとかより、まず「楽しい!」が来る。ポジティヴなパワーを強く感じるし、メンバーそれぞれのミュージシャンとしての見せ場も楽しめるし、全体的にロック的なグルーヴがあって、ロックファンとしてのわがままな要求をほとんど満たしてくれる。メタルバンドのようにかっちり正確な演奏じゃないけど、もっと大きなパワーというかオーラがこのバンドにはあるのだ。

 演奏が終わって、Roineが「明日も来る?明日はスウェーデンから来たMoon Safariと、スウェーデンから来たTrettio罫iga Krigetがでるよ。Swedish Prog Festivalにすべきだね」と、フェスのタイトルに突っ込みを入れて(笑)、ステージを去って行った。あなたって人は(^^;)。

Setlist:
1. Numbers
2. Last Minut on Earth〜In the Eye of the World
3. Drum & Bass Jam
4. Babylon
5. Paradox Hotel
6. Keyboard Solo
7. Stardust We Are (pt.3)
8. Rising the Imperial
<encore>
9. I am the Sun


この日、最前列にいた友人から譲っていただいたオレンジ風船