くむーる&ぬむるすカナダラ旅行記



(3日目)
7月21日・夜

 2,30分ほど待って、ようやく列が動き出した。上階から下階から人が入場してくるので、ちょっと混乱している。やはり並ぶのは苦手らしい。カメラを係員に預けて会場に入った。会場の広さはStar Pine's Cafeの1階部分より少し広いくらい。後ろ3分の1には雛壇があって、座ってみることが出来そう(助かった)。前半分にはすでに熱心なファンが壁を作っているので、雛壇に座ってゆっくり待つことにした。チュルさんに9月に再来日するLars Hollmerのチラシをわたし、裏に宣伝されているRuinsや吉田達也の話などをしたり、重いお土産、marqueeを読んだりして時間をつぶす。

1.UhuhBoo Project Band
 CDで聞いて想像したより、意外と演奏はしっかりしていた(^_^;)。ギターの古っぽいが太い音とキーボーディストのセンスの良さが好印象だった。ファンにはVo.のエキセントリックな歌声とボソボソとMCを喋るギャップのおかしさが受けているようだった。
 前半のスローテンポな曲がももの眠気を誘ったがShibuはかなりノリノリだった。イカ天バンドですごく雰囲気が似てるバンドがあったんだけど、思い出せないなぁ。プログレというよりブルーズロックだと思う。前座だったんだけど観客はみんな良くノッていた。
2.(名前失念)
 女性Voのアカペラソロ。幽玄な歌声に思わずハッと眠気が覚め、聞き入ってしまう。
 彼女はなぜか横を向いて座って唄っていた。どうもミニスカートを履いていたからじゃないかとShibuが言う。足を見せるという行為はまだ「恥ずかしい」部類の行為と認識されているのだろう。下着を見せて歩いている日本のギャルに爪の垢を煎じて飲ませたいものだ。
 ところで立って唄ってはダメだったんだろうか(^_^;)?
3.Lee SangEun
 今までもそれなりに盛り上がっていた会場だったが、彼女が出てきた途端テンションがあがった。ハスキーな声質の正統派歌手。ほんわかとしたムーディーな曲がメインで、2,3曲ロックテイストな曲も歌っていた。ヘアメイクがとっても'80年代。
 バックの演奏はUhuhBooが務めていた。キーボーディストのセンスが、単なる歌謡曲で終わらせないマジックを生み出している。リズム隊は"so so"だ。アンコール前のに唄ったゆったりとした曲が、わたしが唯一知っている曲なんだけど、タイトルが分からない。ううう。
(追記:"Ogiyodiora"という歌でした。何かの映画のサントラに入ってるようです。)

 ところで客も一緒に唄う唄う。(年齢層に寄るものだと思うが)「聴いてやろう」とすましてる人間は居なくて、奇天烈なキャラのファンも少なく、全体的にアットホームな雰囲気。日本だと音痴な人がむやみに歌って悪目立ちすることもあるが、韓国のファンは歌も上手いぞ!

 3時間ほどでライブは終了。客電が付いた後もLeeのファンが必至にアンコールをしている。どこのファンもミュージシャンをもっとも観たい!と思う気持ちは同じだね。しかし空腹なわれらはその光景を横目にライブ会場を後にした。Shibuが出口付近で売られていたLeeのCDを購入。「カルビクイ(骨付きカルビ)が食いたい!」というShibuのリクエストにより、近所の焼き肉屋へGo!


日本では東芝が発売しているようです

 庶民的な雰囲気の焼き肉屋に入った。客層も学生が多いようだ。チュルさんに注文を任せると、骨付きじゃなかったけどカルビ、サンチュとエゴマの葉、キムチと色々な薬味がテーブルに所狭しと並べられた。ここでも焼き網ではなく、ジンギスカン鍋を使用していた。ビールをチュルさんに注いでもらい「乾杯!」。Shibuに後で聞いた話だが、女性はお酒を注いだりしてはいけないとのこと。注いでいいのは将来を約束した恋人や旦那さんに対してだけであり、韓国人女性に対して「お酌してよ〜」と言ったり、強要したりするのは非常に屈辱的な行為なので注意しよう。Shibuが持ってきた日韓辞典を持ち出し、時には筆談を交えて、拙い英語を駆使するために頭がフル回転していたため、記憶が飛んでいる(^_^;)。

 残ったメモを読む。
★チュルさんは日本のアニメや映画が大好きで、「楢山節考」が好きだという話。渋い。日本の映画が好きな理由を「rare」という言葉で説明しようとしていた。ハリウッド映画に比べたら、それは生活感がにじみ出てて生々しいだろう。
★「韓国のサラリーマンは、忙しく働いて晩酌をする暇もないから、昼間飲んでいる」「日本ではそれは無理だ」
★「NANTAからサムルノリまで、韓国人は打楽器のリズムが大好きだ」とか
★(ももが "I love Beer."と言ったら)「韓国でビール飲みはゴレェ(鯨)と呼ばれるんだ」とか。Cassのようにすっきりとしたビールは焼き肉に良くあう(^_^)。
★そういえばShibuとももの馴れ初めも聞かれたな(これは説明が長くて難しい)。
★チュルさんと彼女のツーショット写真を見せてもらう。真面目に可愛かった。
★韓国では奥さんがカルビをサンチュで巻いてあげて旦那に食べさせてあげるんだ、とチュルさんに言われ早速コチュジャンたっぷりのサンチュ捲きを食べさせた。辛さにShibuは悶えていた(笑)。
★途中でチュルさんがトゥブチゲ(豆腐が入った辛目のスープ)を頼んだ。日本の豆腐より堅めであった。「日本の豆腐はもっと柔らかいです」と教えると、ちょっと驚いているようだった。韓国でしか使用されていない食材だと思っていたらしい。「韓国では焼いたり炒めたりいろんな調理法があるよ」と教えてくれた。日本でも湯豆腐とかがんもどきとかあるよと言おうとしたが、なんと説明したらよいか分からず断念。boil? Mix & fry?
★「今、日本でお薦めのバンドはポチャカイテ・マルコだ」の話。ブルガリア語で『ちょっと待ってください』の意味だよ」と教えると「マッテクダサイですね」。King Crimson偉大。

 そろそろお腹が一杯になってきた。いつもの習慣で完食しようとしていると「大丈夫?残しても良いんですよ」とチュルさんからのアドヴァイス。なんだ、残して良かったのか。食事を残すのには罪悪感があって・・・。じゃぁそろそろ出ますか、というときにももが飲んでいたトゥブチゲが気管に入ってしまい咳が止まらず。口からオレンジの液体が出てまるで吐血しているようだった。Shibuの呪いだ。

 新村駅に面した通りらしい大通りに出た。この辺はバーやライブハウスが並んでいる。SlayerやSeplturaが出演する韓国のロックフェスや、日本でも知名度が上がってきたメタルバンドCrashのポスターが貼ってあったりして、ロック血中濃度が高い。日本の韓国紹介サイトにも紹介されているライブハウスRolling Stonesがあった。日中の市内とは様子が変わって、長髪の男の子や、髪の色や服装が派手な若者をよく見掛ける。
 チュルさんは「ビール好き」に気を遣ってくれたのかビアバーに連れてきてくれたが、残念ながら満員。もっと静かなショットバーを探して、ようやく落ち着いた。

 ここでようやくお土産の交換。Shibuからチュルさんにmarqueeを約10冊。元々ももが所蔵していた本だったが、Shibuも同じものを持っているし、捨てるくらいなら誰かにあげようと言うことで、晴れて韓国にやってきた。これは結構喜んでくれた。チュルさんから「このライターは何歳ぐらいなのだ?」と予想もしない質問。「今なら40歳前後の人が多い」と答えたが、何故年齢なのか?韓国のニュースなどを見ていると、必要ないと思われる人物の年齢まで表示される。不思議だ。相手が目上かかどうかがかなり重要らしい。島田荘司がよく「日本人は肩書きや年齢、財産を伺い知ると途端に言葉遣いが変わる」と揶揄していたが(今はどうだろう)、韓国はそれ以上なのかもしれない。なにしろ「大王」の後に「様」を付けるのだ。

でぶうさぎ
高木ブーではない。
 チュルさんから私たちにはT-シャツを頂いた。わたしのは「Masimaro」というデブうさぎのイラストが付いたもの。もともとネットのFlashアニメーションから火がついたキャラクターらしいが、今ではソウル市内の雑貨屋台を見ればどこでもぬいぐるみや携帯ストラップが置いてあるくらい人気者だ。韓国に興味がある人なら一度は目にしていると思う。以下のサイトでダウンロードも出来る。
http://www.mashimaro.co.kr
 のんきそうな顔に似合わず、なかなか毒気があるキャラクターだ。現地では「猟奇的兎」と呼ばれている。
 ShibuにはVictor Tsoiというロシアのロックミュージシャンのイラストが入ったもの。なかなか渋い。90年代初頭、自動車事故ですでに亡くなっているが、Victorの祖父が韓国人なので良く知られているようだ。

 この後は韓国のアンダーグラウンドロックシーンの話になる。
 韓国のプログレシーンは1988年くらいから1990年代前半にはとても盛り上がっていたが、今では殆どファンが去ってしまったそうだ。おそらくそれは、自国のプログレシーンが殆どなく輸入音源を買い込むのみのブームだったからではないかと思う。いまではヒップホップやハードコア野郎が多い。それも極端だね(^_^;)。
 韓国のアングラミュージシャンはなかなか作品が発表できずに困っているという。出せてもシングル1枚で終わってしまうのが殆どだという。日本ではどうして、それほどメジャーではないアヴァンギャルドなバンドがCDが出せるのだと不思議らしい。誰かが出してくれないのなら自分で出せばいいのだ。CR-Rで自分で焼き付け、ジャケットをデザインし、ラベルを貼って、自分のライブで売ればいい。というと、かなり驚いていた。というか受けてた(^_^;)。
 中国のロックヒーロー崔健の話、Phishというバンドの話をしていたらOysterhead経由でPrimusに繋がったとか、Frank Zappaは韓国では理解されていないとか、もう濃い話盛りだくさん。酔いも回って、元々アヤシイ英語がどんどん怪しくなっていく。しかし、いかにチュルさんが自分の愛する音楽に忠実かがわかった。
 11時過ぎ、門限があるのでそろそろ帰ることにした。

 週末だからか人通りは先ほどより多くなっているようだ。昼間はあまり見掛けなかった人種、オタクっぽい風貌、だらんとした服装。ロックに自分を重ね合わせ、自分は特別だと思いこむはみ出し者たち。こんな風景は日本の渋谷辺りと変わらない。

 新村(シンチョン)駅から地下鉄2号線に乗り込む。切符を買おうとするとチュルさんが「コレを使ってください」と切符を用意していた!!おおお、なんて至れり尽くせりなのだ。そこまでしなくて良いんだよ(汗)。途中まで同じ地下鉄と言うことで、一緒にホームに降りた。Shibuは「Pink FloydのT-シャツを着た女の子を見たよ」とチュルさんに言おうとしていたが、文法が崩壊していて通じなかった。アルコールがかなり脳に来ているようだ。チュルさんが「来年あたり日本に行きたい」と言ったので「日本は総てモノが高いよ。地下鉄は韓国の3,4倍だ。食事も高い。CDは2,000円以上するし、魔都・西新宿に来たら、もっともっとお金を使うことになる。」と脅してたら、かなり驚いていた。今日も彼は一生懸命お金を稼ぐために働いているだろう(^_^;)。
 2号線から1号線に乗り換える市庁についた。「今日は楽しかった。またいつか会いましょう!」と固い握手を交わし別れた。

 ホテルに帰る前にいつものコンビニによって、スポーツドリンクと日本で見たことのないデザインのサッポロ黒ラベルを購入。(右の写真参照)門限ギリギリにホテルに戻った。明日はとうとう帰国の日。お風呂に入って、荷物の整理。すぐ寝てしまうのは惜しい気がして、なんとなくTVを眺めながらビールを飲んでいた。窓から通りを見下ろすと、宵っ張り達が帰宅の途につくタクシーの列ができていた。

ビール:Cass、サッポロ黒ラベル



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