くむーる&ぬむるす聖地旅行記



(2日目)
6月15日

かなりの霧

 朝食も付いてないホテルとはさっさとおさらばだ!10時にチェックアウトをする予定で7時くらいに起きる。何となく身だしなみを整え、朝食を食べに外に出たが結構寒かった。油断して半袖で出てきたしぶは一度部屋にGジャンを取りに帰った。ももはロビーで座ってボーっとする。飾ってる絵画は面白いかも。クレーとかその手の抽象画が多い。
 戻ってきたしぶと再び表に出る。ガイドブックに載っていた24時間営業のイタリアン食堂に行くつもりだったが、住所がよく分からず、近くのカフェ(スターバックスみたいな店)で軽く取ることにした。どうにか読み取れた「チキン・フォッカチャ」とオレンジジュースしか頼まなかったが、日本で食べるフォッカチャの1.5倍のボリュームはあったしジュースときたら日本でのサイズ・推定Lサイズだ。お値段もそれなりで1人分約7〜800円かな。かなり満腹。時間的に出勤途中に立ち寄る人が多いようで、スーツ姿の人達が次々とテイクアウトしていく。多分家でもちゃんと朝食食べてるだろうに・・・朝のおやつ?しぶは「腹が空く前に何か入れておかないと不安になるのではないか?」という仮説を立てた。果たしてどうだろう?
 ホテルに戻る途中に、部屋の窓から丁度見下ろす位置にある教会に寄った。名前を見ると「Cathedral Of Sts.Peter and Paul」と書かれていた。日本風に言うと「聖ペテロとパウロ大聖堂」でいいのかしら?一抱えでは足りないくらい太い4本の柱がファサードを支える、どっしりとした印象の教会だ。ドアは開かれていたが中から物音一つしない。おそるおそる覗いてみる。
 赤茶けた外壁とは対照的に、中は白が基調の楚々とした印象。シンプルなステンドグラスから淡い光が射し込む。対照的に内陣のバラ窓は深い蒼の色。ドームの側窓には12人の聖人が嵌め込まれていた。しかし絵画の方が見応えがあった。内陣両脇の巨大な絵画には金箔がちりばめられ、薄闇の中に鈍く光っている。古典的な絵画だけでなく、かなり現代的な絵画や彫刻が側廊を彩っているところも見逃せない。壮麗さはヨーロッパの教会に譲るが、仲々見応えのある教会だった。それだけでは何なので(^_^;)$1の寄付をして蝋燭を灯してきた。といっても実は電気。赤い円筒の上部にスイッチが付いており、押すと中でメラメラと燃えているように灯りがともる。掃除のお兄さん、お祈りしてるご一家、お邪魔しました・・・。

 とっととチェックアウトを済ませ、昨日行ったGreyhaundのバスターミナルに向かった。途中、改装中のホテルの4階から大きい板が落ちてきた。気を付けろーばかー。バスターミナルには大きめのロッカーが並んでおり、荷物を預けておけばバスに乗るまでの行動がとても楽だ。初めて見るシステムのロッカーで、鍵ではなく暗証番号でロックを解除するもの。扉を閉めてお金を入れるとシュルシュルと暗証番号が書かれた紙が出てきた。鍵より無くしやすそうで怖いな。カウンターには昨日の意地悪婆さんの顔がなく爽快。対応してくれたオバサンは親切だった。ようやく16:25発Allentownへの切符を手に入れる。

 唯一の観光、フィラデルフィア美術館に向かうために大通りMarket Streetを走る#76バスの停留所に行こうとしたが、何処も工事中。どうすればいいのかなぁ?目の前をそのバスが通り過ぎようとしていたので手を挙げたら停まってくれた。いい加減(^_^;)。乗客が降りる場所もバス停とは限らないらしい。停まりたいところの近くに来たら座席の上部に張られた紐を引っ張ると適当に停まってくれる。日本でこんなシステムを実行したら確実に道路は混乱状態。広い道路と常に複数車線を確保している余裕のなせる業。運賃は市内なら一律$1.60で乗り換えるごとに¢40かかる。
 City Hallを中心として、北西に15分くらいバスで走ったところにあるフィラデルフィア美術館。今回わざわざPhiladelphiaに寄った理由は、シュルレアリスト、Marcel Duchamp(マルセル・デュシャン)のコレクション。特に、メディアへの公開を遺言によって発表から15年間禁じられていた「1.滝、2.照明ガス、を与えられれば」があるという。せっかく近くまで来て観ない手はない!とにかくGo!。
 バスが着いたのは西玄関。入ると正面に入場券売り場がある。「大人一枚」と言ったつもりだったが「Student?」と聞きかえされる。偽学生証でも持っていればごまかせただろうが、生憎そのような裏アイテムは持っていないので、Adult料金で入った。$8なり。

(左)市庁舎。夜はライトアップされます

 日本語の館内案内と入場バッジみたいなモノを貰い、いざ!と展示室に入ろうとしたら注意されてしまった。リュックを背負っているのがいけないらしい。持つか片手を肩ひもにあてるかしなければならず「荷物があるのに両手がフリー状態」というのはいけないらしい。しかし一部では写真撮影やスケッチ(鉛筆のみ)が許可されており、美術の勉強をしている人間には嬉しいだろう。
 さて、ヨーロッパの絵画をぐるぐると見回ったが20世紀美術が見あたらない。一度マップを確認し、ここの通路をわたれば、というところで立入禁止のロープが張られていた。なんで?ロープの向こう側にいる館員に「2階にまわって、階段で下りてこい」らしきことを言われ、その通りにしたが、その階段室への扉も閉められていた。「一時閉鎖」と書かれているらしい。なんでなんで?脳裏には2年前の旅行でマグリット、メムリンクが観覧不可能だったことがイヤでも思い出される。しぶが「わし等はそういう運命なんだよ」としつこく言うのでももはかなり怒った。そんな言い方ないじゃないかーばかー。

 ・・・いつまでも怒っていてもしょうがないので、気を取り直して別の館員に訊いてみると、理由は分からないがとにかく7月までは20世紀美術は見れないのだという。な〜んたる・・・とほほ・・・。ももがかなりがっかりしたのを見てか、館員はヨーロッパ近代の絵画の見所を教えてくれた。とりあえずゴッホの"Sun Flower"(ひまわり)はどこでも目印になるらしい。観れないならしょうがない・・・。館員にお礼を言ってその場を立ち去ろうとすると「エ〜アリガトゴザイマス」と片言の日本語をしゃべってくれた。いい人だ。きっと我らを学生だと思ったんだろう。
 ヨーロッパ美術を見終え、まだバスまでの時間があるので武器と甲冑の部屋へ入った。RPGでレベルの低い者が着る「鎖帷子」って本当に鎖を繋げてできてるんだ。着るのが重そうだ。マスクも頭を防護するものから顔を保護する部品も加わり、最後にはどうやって前を見るんだ?という鳥の頭のような形も登場。当時の軍人と馬がどのように甲冑を着ていたか、人形を使ってダイナミックな展示をしていた。発掘された紀元前の短剣なども展示され、人間がいかに無駄なことを繰り返して発展してきたか、大笑いするにはとてもいい場所だったと思う。

 その次はヨーロッパの中世期の美術とアジア(特に日本、中国とインド)美術のコーナーへ。ここは凄かった!中世ヨーロッパのパティオと聖堂、インドや中国の寺院、日本の茶室と伽藍をそのまま展示室に移築・再現しているのだ。展示室を繋ぐ通路の建具も展示物の一部で、発掘されたもの(のレプリカ?)を使用している。大胆。遊園地のアトラクションみたいで、ただ歩いているだけで楽しい。
 他には特別展示室とアメリカ美術の部屋が残っていたのだが、移動の時間を考えて退館した。ん〜もう一回来なければならないのか?実はネット上や美術評論の古本を探すとDuchampの問題の作品を見ることができるらしい。興味のある人は探してみよう。私は「ユリイカ」の某号で発見(うふ)。バスを降りた場所と同じ停留所で20分ほど待っていると#76バスがやってきた。運賃丁度の小銭がなかったので$2で払うと、¢40分のクーポンをくれた。もう乗らないんだけどなぁ、記念に取っておこう。

 City Hallを通り過ぎ中心地にはいる。適当な場所で降りて、遅い昼食を取ることにした。Reading Terminal Market(かなり広い市場)の一部に入っているDock Street Brew Pubというビアカフェに入った。


バスのお釣り

 中は広めで清潔そう。カウンターに座り、地ビール"Savege Beer"頼む。アメリカビールの「水っぽい」という印象を一掃してくれる香ばしいビールだった。色はアンバー、口に入れてすぐは甘めだが、後味はかなり強い樽っぽい(?)風味がある。アルコール度数は確認できなかったが高めと思われる。トゲ付き鉄球のマークが目印。様子見で頼んだペンネ・アラビアータは二人でシェアするには量が少なかったので軽めにオニオンスープを追加注文した。器は日本に比べ大きめで、中身は更に濃厚にチーズがこれでもかと言うくらい入っている。オニオンスープというよりチーズスープだ。でも美味しかった。Philadelphiaに来て、とりあえずお腹空いたけど何を食べたらいいか分からないときに寄るには結構イイ場所だと思う。

 Dock Street Brew Pub
1150.Filbert ST.Philadelphia,PA

(どうもFinneus Guageの行きつけの店らしい)(*1)

 腹ごしらえも済み、後はGreyhoundに乗ってAllentownに向かうだけとなった。バスターミナルには各々が乗るバスの出発を待つ人でごったがいしている。待合室の椅子にはTV(有料)が付けられているのはおかしかった。
 初めての長距離バス。約1時間半。とりあえず冷房対策のため上着を着て乗り込む。空調が窓の下枠から吹き出すようになっているため、特に窓側に座る人は注意が必要だ。マイナーな路線なのか乗る人は少なく20人ほど乗せてバスは定刻通り出発した。

 市内中心のから、途中巨大駅30th.Street Stationに立ち寄って、Philadelphiaを後にする。同乗した人の中に我ら同様NEARfestに向かうようなプログレッシャー(プログレマニアのこと)はいるだろうかという話をしぶとしばらくしていたが、そのうちしぶは寝てしまった。Schuylkill River(シャイルキル川)を右手に北上しているようだ。川沿いには日本人が夢見るような、溢れる緑の中にアーリーアメリカン調の可愛い住宅が建ち並んでいる。想像しているより大きい家屋ではない。うるさく感じないのは色の統一感と余裕の土地の広さだろう。ほか、日本車は意外に少ないとか、高架配電塔の形が変わってるとか。

(右)30th.Street Station
バスの中から撮影したので写り込みが・・・

30th.Street Station

 予定より15分ほど遅れてQuakertownに着いた頃には周りの風景は田舎そのものになっていた。自動車以外はだだっ広い草原と茂みと林がポツポツと目にはいるだけ。少し霧がかって幻想的な光景ではある。しかしなんてところに来てしまったのか?バスやタクシーが捕まらないとAllentownから先に進めないのだ。目的地に着く前に不安が広がる。次の停留所Coopersburgはなんとレストランの真ん前。多分、時刻によってはここで夕食を取ったりするのだろう。今回の我らの場合は乗客を降ろしてすぐ出発した。あ、植え込みには野良猫ならぬ野良ウサギが!
 それから山道のような緑のトンネルを抜け、時々ひなびた街を通過しながら、予定より20分ほど遅れてAllentownに到着した。涼しかったバスを降りた途端湿気でむっとする。そのおかげで体は少し元気になったようだ。ここのバスターミナルは街の中心地からはずれてるようで、タクシー乗り場はないし、もちろん流しのタクシーなどもない。一度事務所に入り他のバスでホテルまで行けるかどうか調べた。
 ガガ〜ン。あることはあるが、なんと運行が終わってしまっている。5時半で終わるな〜(T_T)。事務所のお兄ちゃんに話が通じず、電話でタクシーを呼ぶのはちょっと困難(二人とも英語は殆ど話せないので、対面しないと話ができる自信が全くない)。それ以前に今自分が街のどこにいて、どちらの方角に向いてるのかさえ分からない。最悪。仕方ないので遠くに高い建物が見える方向に歩き出した。
 今歩いている通りは"Hamilton Street"。あれ、何かきき覚えあるな。それもそのはずで、NEARfestの前夜祭をやるライブハウスがこの通り沿いにあるらしいのだ。なんだか分からない高い建物を目指し歩き続けるとそのライブハウス、Crocodile Rock Cafeをあっさり発見。インターネットで落としてきた地図と照らし合わせ、何とか方角を確認することはできたが、ホテルまではとても歩ける距離ではない。とりあえず建物をデジカメに納め、タクシー捕獲を続行する。

 重い荷物を引きずって少一時間。雨まで降ってきた。「やはりタクシーを呼ぶべきだろう」と考え、街中にあるHiltonのロビーに入り、公衆電話で呼ぶことにした。電話帳でタクシー会社を調べているしぶに話しかけてくる男性。ホテルの人かな、追い出されちゃうかな。「どうしました?」「どこから来ました?」と訊いている様子。「私たちはPhiladelphiaからバスで来た。Confort Suitesというホテルに行きたいのでタクシーを呼びたい」というと、おじさんは「OK.I'll find it」と言って、ホテルの人となにやら話している。「タクシー呼んでくれるのかぁ、いい人だなぁ」(単純)と思っていると、おじさんは私たちに「私が車で送ってあげよう」と言ってくれた!
ななな、なんていい人だぁ!一応外国なので、知らない人の車に乗って強盗にでも会ったら笑えないな、と不安がなかったわけではない。だが交通手段がない以上、おじさんの車に乗ってみることにした。
 ホテルの裏に停まっていたベンツに向かい、「これが私の車だ、ちょっと待ってね」と掃除をし始めた。新聞やら本やらボールペンやら散在している。とりあえずいらない物をトランクに放り込んで車に乗り込んだ。しぶが助手席、ももが座った後部座席にはTao(道教)の美術の本が置いてある。アジアに関心がある人なのかな。出発前に簡単な自己紹介をした。おじさんの名前はTomさん(推定年齢55才程度)。以前北海道へ旅行に行った経験があるそうだ。彼もAllentownは初めての場所で、道を覚えたいのでついでに乗せてあげよう、という感じだったらしい。英会話がまったくオッペケペーな我ら。話がかみ合わなくて苦労したが「私たちはLehigh Universityで行われるNEARfestというロックフェスティバルを見に来た。明日からはレンタカーを借りるので移動はOKだ。」ぐらいのことは通じたと思う。


そのホテル。何もなさそうでしょ。
 「君たちは高校生か?」と訊かれ、しぶが「エンジニア」と答えたのはまだ良かったが、「妻です。無職です。」とももが答えたときはTomさんはかなりビックリしていた。そんなに幼く見えるのか?それとも呆れたのか(^_^;)? 街中から15分ぐらい走ったところにConfort Suitesの看板が見えてきた!よかったぁ、無事に到着。Tomさんにはどれだけ感謝しても足りない。少しだけ疑ってしまったのも申し訳ない。もうホントにホントに感謝!!!お礼といっても思いつかないので$5ほど渡そうとしたがTomさんは断って帰っていった。もう二度と会うことはないだろうけど、一生忘れない。

 インターネットで予約したConfort Suites。道路を挟んだ向かいには"Dorney Park & Wildwater Kingdom"というかなり大きな遊園地がある。周りにゴルフ場がいくつかあるようで、リゾートホテルといった感じである。プリントアウトした書類を見せると、名前を聞かれただけでチェックインは終了。Philadelphiaでもそうだったがしぶの名前「Kazuhiko」はかなり言いにくいらしい。ももの名前「Naoko」はニャーコとかニョコとか呼ばれていた。鍵を貰って部屋へ向かう。は〜〜〜(安堵のため息)。

 部屋は2階ということで外から少し中が見えてしまいそう、という以外は特に不満のない作り。冷蔵庫もあるし、電子レンジまで。バスルームの壁も壊れてないし鍵も掛かるし。浴槽はなんとジェットバス付き!しっかり浸かることができる深さで、これは日本人にはたまらないお風呂だ。後で楽しもっと。
 部屋でのんびりした後軽く夕食を取ることにした。ロビーから隣のバーに行くと、カラオケが聞こえてくる(^_^;;)。TV画面に歌詞が出るのは一緒だが、日本のようにイメージ映像がなく文字だけであった。そしてその場にいる客全体が歌う人を盛り上げる。これは歌いやすいだろうなぁ。我らは禁煙席なので盛り上がる場所から少し隔離された場所に座り、チキンヌードル(野菜と鶏のささみスープにヘゲヘゲのヌードルが少しだけ入っている)、サラダ、フライドクラブスティック(カニの唐揚げ)を頼んだ。一応加減したつもりだったが、やはり(我らにとっては)ただごとではない量が来た。カニの唐揚げはともかく、それに添えられた山のようなフライドポテトが難関であった。ももの体調が割と良かったこともあり、何とか完食できたが食事の度にいつも思う。「何故こんな苦しい思いをして食べなければいけないんだろう」と(;_;)。


(*1)(どうもFinneus Guageの行きつけの店らしい):
 Finneus Guage(以下FG)のHP参照。Echolyn/FGのキーボーディスト、Christopher Buzbyの好物には"Dock Street Amber Lager"というのがリストされている。FGの1stのThanks listにも「Dock Street Brewery」と書かれていたりでFGというよりはBuzby氏の好物といえる。
 よくみたらEcholynの「Suffocating The Bloom」にも書かれてた。彼らの地元West Pointに同じ名前の店があるのかもしれない。


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