「COUNTERPARTS」ショウはここで一区切り、懐メロ大会に突入した。何百回も聞いた変拍子のギターのイントロ・・・わあぁ、"Limelight"だぁ。この曲と"Tom Sawyer"、「MOVING PITURES」からの曲はさすがに人気が高い。大合唱。エンターテインメントの頂点と恵まれた人間関係を同時に持つ事ができたRUSH。20周年に何を思うだろう?メンバーのリラックスした演奏が心地よい。見てる方まで楽しくなってしまうよ。
続いてエレクトリックドラムに導かれて、ちょっと久しぶりの"Mystic Rythms"で小休止。個人的な感想だが、「POWER WINDOWS」からの曲はライブで聴くのがカッコいい曲("Manhattan Project","Territories"等)とスタジオ盤で聴く曲があって、この曲は後者に属すると思う。キーボードの深みやエフェクト的な音を加えるのに3人ではやはり手も足も足りないところがある。人一倍、いや何倍も苦労するのはGeddyでしょうが(^_^;)。
美しいアコースティックギターのアルペジオで"Closer To The Heart"が始まり、ショウは山場を迎える。バンドと観客が一つになる。国が違う人間同士でも一緒に楽しむことができる、まさに「Closer To The Heart」の瞬間。Neil先生の哲学とRUSHサウンドのもっとも美しい結晶はファンにとっては"Imagine"に匹敵する愛のアンセムではないだろうか?そうだ、コレを歌いに来たんだ、この瞬間を知りたくて・・・。
いつものお遊びパートに入る前にAlexがリードヴォーカルをとって笑いもとった。貴重なものを見たな、コレは。普段のエンディングとは違い、少々リズムがファンキーになっていた(*2)。Neil先生PRIMUSにあてられたか?ウソウソ、思わずからだが動くのはRUSHも同じ。ドライヴ感、といっても戦車やバイクで爆走するようなHR/HM系のノリじゃなくて、地面から10センチ浮いたところを滑るような、不思議なドライブ感がRUSHサウンドの特徴の一つ。コレに乗ってしまった人はどこまでも行けてしまうぞ。
遠くから聞こえてくるアフリカンドラム、と来れば"Show Don't Tell"だ。畳みかけるリズムに私はクラクラ来ました。バンドの息がぴったりで一糸乱れぬとは正にこのこと。あぁ、RUSHのみなさんは簡単に演奏しているが、いざ演るにはとっても凄いことをしている。プロだよなぁ。しみじみ思っていると、ベースソロだ!血管が切れそうになる(^_^;)。Geddy Leeはルックスとは裏腹に(失礼!)とても艶やかなベースラインを弾く人だと思う。とかく日本では「無機質な」と言われがちな彼らの音楽に、彩りを添える彼のベースの存在は大きい。ツボを突くんだよねぇ。この曲の終わりの方で噂の巨大ウサギが登場!
ブラックユーモアたっぷりのアニメーションに続いて"Leave That Thing Alone"。どこまでも伸びるギターのロングトーンは本当に天まで届きそうだ。ただ、個人的にはRUSHのインストナンバーの中では一番つまらない・・RUSHの曲としては。極上のセンスがなければインストだけで聴かせる事は本当に至難だと、歌ものになれている自分は思ってはいる、つもり。
インストナンバーに続くのは、おなじみドラムソロだ。オクタバン系の抜けのいい響きが会場に広がる。ドラムバカ一代男、もとい、ドラムの神様の名にふさわしく、「ALL THE WORLD'S A STAGE」から受け継がれている定番フレーズから最近凝っているアフリカンリズムまで、ありとあらゆるテクニックとアイデアの数々を披露してくれた。ドラムもここまでやれば主役になりうるのだ。日本なら双眼鏡を持って突っ立っている人間が多多いて、どうにもならない雰囲気になりそうだが、アメリカはここでも大騒ぎなのだなぁ。勿論エアドラム小僧も何人か目撃できた。
RUSHの曲でアコースティックギターで始まる名曲は多いが、その中の一つ、"The Trees"が木漏れ日と共に始まる。最近伐採が著しいカナダ西部の森林地帯の映像も交え、本来の歌詞の意味とは違う"The Trees"が訴えられていた。乱伐の後の枯れた木々が余りに悲壮だった。スクリーンはこんな役目も果たす。
そして、この素朴な小曲に導かれるのは−"Xanadu"。ビデオで何十回と聴いたはずなのに、このブリッジ部分に鳥肌が立った。ライティングが曲の幻想性をさらに盛り上げ、観客の叫びはさながら遠吠えする獣のようだ。確かに、空気が変わった。この名曲が生み出す空間に、実際にいるなんて---!
「EXIT・・・STAGE LEFT」のように、Alexはダブルネックのギターを持っていたが、Geddyはジャズベのままだった。重いもんねぇ。最近のGeddyの声域では、さすがに昔のような超人的なハイトーンは出ないようだ。大曲主義の頃ならいざ知らず、現代の「今、目の前にある問題をでどうすべきか」という姿勢にあるコンセプトには、彼のヒューマンな「普通に歌ってる」声がマッチしてるといえる。オリジナルの曲調を生で聴けないことは残念ではあるが、結局どうでもいいことなのかも。
前回はメドレー形式で"Anthem"につながる展開だった。えっと、何だろう、、このリフは・・・あれ?もしかして!なんと「HEMISPHERES」ではないか!?10年以上演っていないと思われるが、何でまた?それはともかく、こんな曲が聴けると思ってなかったので、取り乱しちゃったわよ、私。最近ファンになったばかりの人で、まだこの組曲に取り組んでいない人も中にはいるのではないだろうか?"Xanadu"よりきついハイトーンを、Geddyは頑張っていた。あぁ、健気だ。(誰がこんな選曲をしたんだ?笑うぞ。)CDで聴くよりこの曲の印象はヘヴィで奇妙。最近で言うならばVOIVODのPiggyみたいな変態コードを使っている。タイトな演奏がスペーシーな空間を生み出し、ステージから観客席まで包み込む。かつてJeff BurtonはRUSHを「空間の呪術師、あるいは導師」と呼んだ。正にその通り、この空間に身を浸すことこそファンの至福の喜びだと思うのだ。う〜ん、生きてて良かった!
「HEMISPHERES」組曲を全部やると大変なことになるので、"Prelude"のみで終わり、締めはやっぱりコレ!"Tom Sawyer"!Geddy曰く、「RUSHの曲の真髄を表している」というこれは変なアレンジにも関わらず大人気。こんなにヒップでノイジィで複雑な反逆歌もないのだが、さすがRUSH、彼ら流のセンスとユーモアで聴かせてくれる。この曲はドラムが熱かった。年齢が増すごとに上手くなってる人ってそういないよな、先生。感心するばかりだ。大喝采のうちにセットが終了。えー、まだ足りな〜〜〜い!
(*2)「Different Stages」を聴いてください(笑)。