2022年から年間Bestをここに設置する事にしました。

2021 My Best 25 Albums (寸評)

2022年1月2日

1. Mastodon / Hushed And Grim (United States)

2021年の1位はMastodon。中毒性が高く、体内に染み込んでくるような掠れ気味のVo.とメロディの心地良さで2枚組でもあっという間に聴き終え、また最初からリピートする日々が続いた。一聴すると地味でキラーチューンが無いが、むしろこれが作品全体像を際立たせているように思えたりして。結局日本盤が発売されなくて残念だった。

 

2. Dream Theater / A View From The Top Of The World (United States)

2位は僅差でDT。DTHQを構築していたためパンデミック下を逆手に取り最良の環境でレコーディング、LaBrieはカナダからのリモート参加で作り上げたこれぞDream Theaterという作品。Jimmy TとAndy Sneapの見事な手腕による各楽器の音の粒立ち具合も最高でHeavyでありながらもクリアなHi-Fiサウンドを実現。BDでは各曲全てにMVが制作されており、彼らには不可能なことなど無いと思わせる前人未到の域に達している。”The Alien”の後半Rudessのオルガンからの目眩く展開が個人的にBest Tune。世界中の社会問題を取り上げた” Answering The Call”のエンディングはManginiのプレイに息が止まる。 まるで映画の風景が見えてくるようなDTにぴったりなテーマと感じた”A View From The Top Of The World”の緊張感溢れる壮大な狂想曲は圧巻。

 

3. Ronnie Atkins / One Shot/4 More Shots (The Acoustics) (Denmark)

3位はPretty MaidsのRonnie Atkinsのキャリア初ソロ。元々アルバムをリリースする予定は無かったようだが自身の健康、世界的なロックダウンに後押しされて制作。レコーディングが終わるまで生きているか分からない状態で進められ、癌ステージ4診断を受けてもこれだけポジティブに珠玉のメロディーに溢れた傑作を届けてくれた。今生きていることの大切さ、今を楽しもうという前向きな姿勢、人生の集大成的内容である。DVDが収録されたEPも併せてエントリーとする。これほどの作品をサブスクだけで終わらせず、しっかりフィジカルで残してくれた事にも感謝したい。

 

4. Gojira / Fortitude (France)

不屈の精神と題された人類への強いメッセージが込められた傑作。レコーディングもパンデミック下で中断するなど苦労したことが窺えるが、ポジティブで強靱な作品に仕上がっている。日本盤には2016年のMagma World TourからのLiveトラックが3曲収録されており、圧巻の内容である。

 

5. Stian Carstensen / Musical Sanatorium (Norway)

Farmers Marketではすっとぼけた超絶演奏を繰り広げるStian Carstensenであるが、ソロは至ってシリアス。これは現在の世界状況から自身へのセラピーを兼ねた作品ではないかと思ってしまった内容であるが、天才が作った真剣な音楽にじっくり聴き入ってしまった。必聴の大傑作。

 

6. Rodrigo Moreira / Eternamente Como Água Que Corre (Brazil)

農場で暮らしながらガットギターを製作しているというRodrigo Moreira、風景が目の前に広がるような清涼感溢れるミナス音楽の最良部分を抽出した見事な内容。disk unionのメールインタビューがとても良い。タイトルはジャケの通り馬への信頼・敬意・愛情持って接している内容が表現されており、正にそんな感じの音が溢れ出てくるような傑作。

 

7. Isildurs Bane & Peter Hammill / In Disequilibrium (Sweden / United Kingdom)

前作In Amazoniaの成功を受けた結果のIBとphコラボ第2弾。IBとphのお互いの信頼関係も深まり、両者の個性を生かしたどんなジャンルにも属さない硬派で孤高の作品である。これぞProgressiveな内容。来日祈願筆頭。

 

8. Anairt / Nuestro Tiempo (Spain)

Trianaを逆読みしたAnairtの1st。アンダルシアのパッションが凄くて、スパニッシュ・ロックLegend達へのリスペクトが尋常じゃない。テクニック的にも見事でフラメンコ・ギターが舞い、手拍子が鳴り響き、愚直で哀愁漂うVo.などなど、ほとばしる愛情にこちらも胸が熱くなった。聴き所満載の必聴傑作。

 

9. Tillison Reingold Tiranti / Allium Una Storia (Multi-National)

The TangentのAndy Tillisonが少年期に見たイタリアの無名バンドへのトリビュート作「ネギ物語」。Andy Tillosonが担当したOriginal MixとJonas Reingoldが担当した2021 Mixが収録され、アナログ的70’sのプログレとそれを現代に甦られたような両サウンドを楽しめる興味深い作品。このアルバムのキモは兎に角Roberto TirantiのVo.が素晴らしい事であろうか。

 

10. TsuShiMaMiRe / Sake Mamire (Japan)

うしろ前逆さ族「ニュー・スポーツ・オンラインセミナー」で知った、つしまみれの待望の新作「酒まみれ」。全曲アルコールをテーマに絞ったお酒にちなんだバラエティな楽曲と優れた歌詞に刺さりまくり。安定した演奏と早口な歌が見事。

 

11. Carcass / Torn Arteries (United Kingdom)

元来のGrind Core、Death Metalが見え隠れしているが、もしかしたら今年選出したアルバムで最もHeavy Metal的なものといったらこれではないかと思うような王道作。しかしCarcassの真髄に迫るクオリティの高さ。もしかして彼らの最高傑作ではないかと思っている。グルーヴとアグレッシヴさが見事に融合した聴けば聴くほど味わい深くなる作品。インナーの心臓をあしらった野菜が徐々に腐っていく様もCarcassらしくて最高。

 

12. 烏頭 / 生 -sei- (Japan)

ギターからバリトンサックス/バスフルート!になったことでサウンドが大きく変化した烏頭待望の新作。一発アナログ録音という緊張感が漲った作品でGOK Soundの真髄、アルバムタイトルに相応しい生々しく躍動感ある音に仕上がっている。

 

13. 曇ヶ原 / same (Japan)

マリア観音のa-kira、元うしろ前逆さ族のムJAPANらが参加した昭和の香りを纏ったハード・ロックとフォーク・ロックに王道70’sプログレに加え、最大の特長である石垣翔大の独特な歌詞が不思議に融合している古くて新しい音。ギターの艶めかしい音、暴れまくるオルガンとドラムのテクニックも申し分なく日本独自の甘美でドス黒い部分も見え隠れしてしており、正直この独創的な歌詞を歌い上げる事ができる強力な別のVocalistが加われば鬼に金棒と思っているんだが...。その点が惜しい。

 

14. Premiata Forneria Marconi / I Dreamed Of Electric Sheep – Ho Sognato Pecore Elettriche (Italy)

4年ぶりの新作。前作「Emotional Tattoos」同様伊語と英語両方収録で直訳ではなく世界感が異なっており特筆する内容。SF傑作「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」にインスパイアされた作品で人間らしく生きるとは?をテーマにじっくり練り上げられた彼らにとっては初の完全コンセプト作。” AtmoSpace” の不穏さと穏やかな展開が交互に繰り返される様はPFMならでは。Barock ProjectのLuca Zabbiniの参加が更に作品の深さに貢献していてインスト”Trasumanza Jam”などは必聴。 聴けば聴くほど心に染み込むスルメ的作品。

 

15. The Ruins Of Beverast / The Thule Grimoires (Germany)

前作「Exuvia」の漆黒密教サイケデリック・サウンドに魅了されて以来、彼らの新譜を待ちわびていた。インパクトは前作に譲るが危険な世界は相変わらずで、私の求める暗黒Metalに合致しており、真っ当な人には決して勧めないが、後戻りできない病んだ人には絶対の自信を持って大推薦できる傑作。

 

16. サイケ奉行 / My Guitar Must Be Loud For The Universe (Japan)

英国Trad/Progを偏狂的に愛しオマージュ的内容と時代劇を融合した?唯一無二な存在、津山篤率いるサイケ奉行の最新作。個人的には” 此処は女性専用車両...乗ってしまった男”が痛いほど刺さりまくった。

 

17. Accordo Dei Contrari / UR- (Italy)

2014年の「AdC」は正直ピンと来ることが無くて暫く本作はスルーしていたが巷の評判が高くてダメ元で聴いてみたら大当たりだった。硬派でテクニカルなインストAvant Jazz RockでArea的な要素もある強烈な作品。Cunieformからリリースされて納得の内容。

 

18. Hasse Fröberg & Musical Companion / We Are The Truth (Sweden)

今作もアナログ的な音色のHard RockでHasseのメロディーセンスも抜群のポジティブ・パワー溢れる作品で聴いていると高揚してくる。こういう作品って昨今中々出会えないんだよなぁ。

 

19. Transatlantic / The Absolute Universe: Forevermore [Extended Version]/The Absolute Universe: The Breath Of Life [Abridged Version] / [Ultimate Version] (Multi-National)

Extended Version、Abridged Version、BDのUltimate Versionと3つのVersionを一気にリリースするという前代未聞の狂った企画。いい加減にしろなんだけど、まぁ彼らなら仕方ないかと思わせる内容で CD/LP/BDを一日10時間以上かけて聴いたときにはぶっ倒れる寸前だった。で、どこを切ってもTA。ただランダムで曲流しても、どのVersionかまだ把握できていない。今後も無理な気がしているけど。

 

20. Ad Nauseam / Imperative Imperceptible Impulse (Italy)

2021年聴いた中で最も可能性を秘めたAvant-garde Technical Death Metalだったのがコレ。次世代Metalの方向性の一つとして注目に値する作品である。屈折したMetalをこよなく愛する人は必聴。

 

21. Grorr / Ddulden’s Last Flight (France)

基本はDjentであるが、良い意味での東洋の神秘の勘違い&憧れとサウンドのミスマッチ具合が成功している稀有な作品だと思う。

 

22. Big Big Train / Common Ground (United Kingdom)

コロナ禍影響か3人メンバーの脱退で心配していたがBBTの骨格はしっかりと守られており新たなステージに移行した意欲作。徐々に日本のマニアにも浸透されてきてアフター・コロナでの来日公演も期待される中であったがVo.のDavid Longdonが事故に遭って亡くなってしまった。次作の録音は収録済みで彼の遺作になる。RIP David Longdon

 

23. Steven Wilson / The Future Bites (United Kingdom)

SWのエレクトロPop作。ちょっと古い作風な印象もあり、さらっと聴き終える。もはやProgの範疇を外れているのも全く気にならないが、相変わらず彼の視点は興味深くてSDGsとまでは言わないが、個人消費の考え方とか現在テクノロジーと人間の関わりとか音楽を通じて自分を振り返る良い機会を与えて貰っている。個人的Best Tuneは” 12 Things I Forgot” 麺汁。

 

24. 東京事変 / 音楽 (Japan)

日本において今回選出した中で最もメジャー作か。機は熟したというか解散後の初の復活フルアルバム、色々なジャンルを内包して素直に楽しめる。椎名林檎は自分で好きなことを最大限生かすための行動というかメディアの露出方法などマーケティング戦略に長けていて良いね。何となく日本の昭和Jazzへの憧れが感じられるのは気のせいか。

 

25. Leprous / Aphelion (Norway)

次世代を牽引するLeprousの7th。これまで以上に内省的な印象でジャケ通りの音像。隠し味のViolinや時折入ってくる凶暴なギターに惹かれるが残響音がちょっと息苦しく感じるところがあり、これは好みの問題だろう。個人的Best Tuneは”All The Moments”。