Sebastian Hardie

オーストラリアの輝く星

For a moment it will hold you-
for a moment it will hurt you -
and this moment should stay with you - this moment from my heart...

 実はSebastian Hardieの奏でる音楽に魅入られ、たったそれだけでオーストラリア大陸に1人で旅立ったことがあった。誰も信じてくれなかったが。目的は?どうして?って周りの人がみんな聞いてきたのだが、まさかSebastian Hardieが生まれた土壌にひたってみたいって普通の人に説明するのも面倒だったし、ただなんとなく行くと言ってごまかすことにした。荷物はパスポートと簡単な着替えとガイドブック、そしてSebastian HardieとWindchaseを録音したカセット。これで充分だった。
 哀愁の南十字星をとにかくこの目で見たかった。甘酸っぱくも爽やかで雄大でゆったり過ぎ去っていく空気を体験してみたかった。Sebastian Hardieの音楽にはそういったオーストラリアの最良の部分を充分引き出していて、目をつぶってきいているとどこまでも果てしなく広がる地平線と赤茶けた砂漠に夕日が沈み、そんな中で南十字星が空からぽつんと輝いている...そんなVisionがパッとひらけてくるような感じなのである。ほろっとくるような叙情的なサウンドに身を任せていくと、もうどうしてもじっとしてはいられなかった。やはりこれは生のオーストラリア大陸を体験しないことには、と。Sebastian Hardieにはコレくらい惚れ込んでいた。今時いるんですかね?こういう奴って。音楽によってその国、その土地に行きたい衝動にかられる人って。少なくても僕にとってはSebastian Hardieはそこまで思わせる魅力を持ったBandなのだ。
 行ってみたオーストラリア、まさにそこにはSebastian Hardieが奏でていた風景があった。夕方から夜にかけて美しい空に燦然と輝く南十字星...。また、インド洋が望めるDarwinからAlice Springsを経てアイヤーズ・ロックを目指した1200Km以上一気に南下するバス旅は本当に素晴らしかった。どこまでも続く地平線をひた走り、周りは赤茶けた砂漠、蟻塚やサボテンが手つかず状態で地平線まで続いていた。自然の力強さを感じた。人ってほんとちっぽけな存在な気がした。小さいことでクヨクヨしているなんて器が小さいというか、もうそういった細かいことはどうでも良くなるくらいの包容力をオーストラリア大陸は持っていた。早朝、アイヤーズ・ロックの日の出を見ながらばったり大の字で赤茶けた土に寝転がった瞬間、僕の頭の中でSebastian Hardieの音楽が次から次と巡ってきた。来ることが出来て本当に良かったと心底思った。
なんかセンチメンタルになってしまったが、Sebastian Hardieをきくと何故か自分の弱い部分にズキーンときてしまうのである。
 Progfest '94でまさかの復活を遂げたSebastian Hardie。今手元に「Live in L.A.」はその時演奏された完全版Liveである。ブランクを感じさせない実に素晴らしい演奏である。しかもこれを契機に新たに活動を続けていくという。とても嬉しいことである。しかも1st, 2nd、そしてMario MilloのソロEpic IIIもデジタルリマスターで復刻。未聴の方は是非とも雄大なサウンドに身を任せていただきたいと思う。

Mario Milloの新譜「Oceans of The Mind」がリリース!
 '99暮れから自宅スタジオにて製作を開始し遂に完成。「Four Moments」を彷彿とさせる作品に仕上がった模様だ。アルバムには20ページのブックレットが封入。
参加メンバー:
Jeff Camilleri (bass & backup vocals)
Robbie Siracusa (drums)
Fellow composer / performer David Hirschfelder played some guest keyboards
Jess Millo (Mario Milloの18歳の娘。デヴュー録音)
Dave Wilkins (backing vocals on "Utopian Babies", "T.O.F.O.G.")
Phillip Hartl (Violinist, string section担当)

 詳細は下記:
http://www.mariomillo.com/
Liz Milloさん(Mario Milloの奥様でしょうか?)お知らせありがとうございました。Thank you for information. Liz Millo!!

☆Sebastian Hardie / Four Moments (哀愁の南十字星) (Mercury PPD-3043) '75
                            (Avalon MICY-1115)

 不朽の名作。もはやあまり語ることはありません。時の流れに左右されない輝きを放つ。雄大で美しい。僕の人生を大きく揺さぶった作品。当時これききながら死んでも構わないとまで思わせた。黙ってきいて泣いて欲しい。山田道成氏の解説も泣けるほど良い。Avalon盤は1st, 2ndとも1st以前の録音が収録されている模様。まだ入手はしていない。どうしてもOpeningsで締めくくる完璧なまでの曲の構成のマジックが薄らいでしまう気がして、実はきくのが怖いのである。

☆Sebastian Hardie / Four Moments (Avalon MICY-1115) '75
 デジタル・リマスター再発盤。内ジャケのメンバー写真など前回プレスCD盤より鮮明になり改善されたが、日本フォノグラム盤ではないためか、邦題の「哀愁の南十字星」ではなく、単に「フォー・モーメンツ」になっているのが痛い。これは個人的にはCrimsonの1stの邦題に次ぐショックである。(^^;
 ボーナス・トラックとして2ndシングルのB面であった"Day After Day"を収録している。明るい爽やかなコーラスとMario MilloのギターとToivo PiltのKey.が心地よいPopsフィーリング溢れる佳曲であるが、"Openings"の余韻と雰囲気が異なるため分けてききたいところである。

☆Sebastian Hardie / Wind Chase (風の唄) (Mercury PHCR-2001) '76
                        (Avalon MICY-1116)

 "At The End"。この曲のシンバルの音がきこえてきた瞬間、雄大なオーストラリアの自然が広がる。これまた甘美な作品であるが、1stよりも音色にメリハリがついている分、初めてきく方はもしかしたらこっちから体験してみると良いかも。ドライブの趣味はないけど、真夏のドライブにクーラーをかけずに窓を開けてきくと最高かもしれないなぁ。これも名盤中の名盤。

☆Sebastian Hardie / Windchase (Avalon MICY-1116) '76
 デジタル・リマスター再発盤。冒頭から20:00を超える"Windchase"で圧倒的叙情サウンドの洪水に卒倒すること必至。来日公演で披露されたときには驚いた。パブで演奏していた時のソフト・ロック"Since You Left Me"をボーナス・トラックに収録。

☆Sebastian Hardie / Live in L.A. (Avalon MICY-1114) '99
 伝説のSebastian Hardieのまさかの復活。メンバーの演奏はブランクを感じさせないくらい実にしっかりしており、ずっとSebastian Hardieをきき続けたファンを失望することはなく、むしろ今後の活動が本当に実に楽しみで期待を持たせてくれる。彼らはきっと演奏活動を続けていたんでしょうね。素晴らしいことです。一度はLiveを見てみたいですねぇ...。


 2003年7月13/14日に行われたライブ、愛のレポートはこちら



Mario Millo

☆Mario Millo / Epic III (Nippon Phonogram BT-8117) '79
              (Avalon MICY-1117)

 Sebastian Hardie = Mario Milloと言われているが、これはやはりMario Milloのソロ作品風である。むしろWindchaseで一区切り付けたという感じ。確かにB面ラストの"Epic III"は曲の構成からSebastian Hardieを思い起こさせてくれるが、サントラ的な作品と思う。

☆Mario Millo / Brides of Christ (Silver City SIL97-002) '91
 ABC TV Dramaのサウンド・トラック盤。EURO-ROCK PRESS Vol.2, 15のMario MilloのInterview記事によると「Brides of Christ」はエミー賞にもノミネートされたらしい。このサントラはARIA(オーストラリア・レコード大賞)、シリーズについてはAPRA(作曲家賞)で「ベスト・テーマ曲」「ベスト作曲」部門で獲得。全般的に物悲しい感じとメイン・テーマを繰り返しながらたおやかに進行していくしっとりとしたサウンドである。Cos Russoが共演とプロデュースを担当している。

☆Mario Millo / GP (Silver City SIL96-001) 96
 ドラマのサントラらしいのですが、これは思いの外素晴らしい作品でありました。
Mario Milloのアコースティックなギターを中心に爽やかに繰り広げられる小曲集。叙情的な曲が目白押しで女性Vo.が入ってくると、シンフォファンならずともぐぐっとくる。傑作。

☆Mario Millo / Oceans of The Mind (Red Moon Music RED 01-008) '01
 '94のProgfest以降なかなかSebastian Hardie / Mario Milloの情報が無かったが突然Liz Milloさんから嬉しいメールが飛び込みMario Milloの最新作をきくことができた。Mario Milloソロ名義ではあるがバンド形態に近いサウンドであり、もしかしてこれはSebastian Hardie用のマテリアルも含んでいるのではないかと思われるような雄大なサウンドが広がる力作である。Hammond organが入っており、古い楽器と現代的なサウンドとの融合が効果的。随分長い時間をかけてじっくり作られたようで、冒頭の"Faith in Art"から引き込まれる。コーラス・ワークとストリング・アレンジが凄く良い。このアルバムに参加しているJeff MilloはMario Milloの娘さんらしく、これがデヴュー録音だそうで可憐な声がきけるぞ。Sebastian Hardieのファンであれば気に入ること間違い無しである。個人的には"World of Love"における美しいギターに絶妙に重なってくるストリングス、そして少女達のコーラスに胸が熱くなった。
 壮大で幻想的なジャケット・アートワークにも注目。私はTransatlanticを思い出してしまった。(^^;

Mario Millo / GP

Oceans of The Mind


☆Windchase / 1 Symphinity (夢幻神殿) (King K25P 356) '77
 後のMario Milloのインタヴューで明らかになったことだが、経済的につらくてSebastian Hardieを解散を余儀なくされたものの、音楽に対する情熱は冷めず、Mario MilloとToivo Piltは'77に2ndのアルバム・タイトルにもなっているWindchaseというBandを新たに結成。だが経済的に悪い状態は回復することなくこの1枚で再び解散することとなってしまう。オーストラリアのレコード会社のサポートが無かったのが最大の原因らしい。オーストラリア大陸の魅力を余すことなく伝えている音楽なのに、世の中って皮肉なものである。「Epic III」も再発されたことだし、この機会に「Windchase」も是非復刻して欲しい。実にゆったりとした爽やかな作品。とっても良いですよ。

☆Windchase / Symphinity (Avalon MICP-10175) '77
 待望のデジタリー・リマスタードCD盤での再発。目玉は"Mario Millo & Men from Mars"名義で'98/7のHarbourside BrasserieでのLiveボーナス・トラック、"Horsemen to Symphinity"であろう。力強いアレンジで来日公演での演奏も素晴らしかったのが記憶に新しい。来日公演での欲を言えば、Windchaseの他の曲は合間のBGMで流すのではなく、生の演奏でききたかった。

☆Ayers Rock / Big Red Rock (Mushroom MUSH32017.2) '74
 後にWindchaseに参加するベースのDuncan McGuire、Mario Milloの「Epic III」に参加するドラマーのMark Kennedyが在籍していたAyers Rockの1st。これは'74/Sep./21,22のメルボルンArmstrongs StudioでのLive音源。ライトタッチのファンキーなサウンドである。なお、"Boogie Woogie Waltz"はWeather Reportのカヴァー。

☆Ayers Rock / Beyond (Mushroom MUSH32016.2) '75
 彼らの代表作とされる2nd。以前売ってしまったため再挑戦だ。(^^; コンガで導かれるダークでサイケでファンキーな曲と突如叙情的な曲とが展開/交錯する泥臭い"Moondah"は'75という時代を感じさせる。"A Place to Go"はLos Angelesでのミックス。"Catchanemu"は黒っぽいフュージョンサウンドで何故かカカドゥ国立公園に行った気分になるかも。(^^; "Angel in Disguise"でのストリングス・アレンジと当時の表現的にクロス・オーバー・サウンドがテクニカルに展開していくところが山場と言って良いか。

Windchase
Windchase

Ayers Rock / Big Red Rock

Ayers Rock / Beyond