金大煥(Kim DaeHwan)

 1900年代に生き続けた打楽器奏者。彼の器のデカさは半端ではない。'33生まれ。とてもそんな歳には見えないパワフルなオヤジであった。両手に6本のスティックを持って叩き始めたのには驚いたが、後から聞いたり調べてみたところ、以前日本で打楽器奏者の高田みどりに両手にそれぞれ2本ずつで演奏するダブル・スティック奏法を教わり、訓練を重ねた結果トリプル・スティックをあみだしたらしい。またこのおっさんの才能は多彩で、米一粒に般若心経約300字彫刻してギネスに載っているらしい。神業のような手先である。その反面ハーレーダビットソンに乗るライダーでもあり、ブッ飛び度は尋常ではない。よって韓国では国民的スターらしい。こんな歳の取り方出来たらよいが、凡人には無理だろうな。
 病気とは無縁と思っていた強靱な金大煥氏は来日直前、信じられない事に'04/3/1(1999年51月1日)午後7時20分、肺結核にてお亡くなりになりました。ご冥福をお祈りいたします。
 詳細は下記:
http://www.t42.co.kr/T42_Kimdaehwan/
http://www21.ocn.ne.jp/~bigtory/kdh.html
http://www.asahi-net.or.jp/~WA5T-HND/kot-1.html




☆Black Rain (黒雨) (E&E Media SCO-022CSS) '91
 金大煥の1st CD。Big AppleのLiveにて「黒雨」とはなんぞやとの質問があった。これは金大煥の"号"だそうである。「黒」は"見えない、隠された"という意味を現し、「雨」は"殴る、Beat"を現しているそうである。このCDは'91/5/25のSound Valley Studio(東京)でのLive音源である。ジャケットからも分かるとおりトリプル・スティックをフィーチャーした躍動感溢れる生演奏を収録している。CD企画は湯浅学。

☆Black Roots (黒莖) (Woongjin Media Corp. WJAC0377) '92
 山下洋輔(p)、梅津和時(sax)、「黒雨」においても参加していたKang EunIl(ヘイグム)、そして金大煥(per.)による韓国での壮絶なLive音源。John Coltraneのお馴染みの名曲"Afro Blue"や"Naima"、韓国の代表的民謡"Arirang"、Jazzのスタンダード・ナンバー"My Favorite Things"を収録。特に火が吹き出るような山下洋輔、梅津和時のプレイが素晴らしい。これもCD企画は湯浅学。


黒雨

☆吉沢 元治 featuring Barre Phillips, 金大煥 / 音喜時 (ちゃぷちゃぷレコード CPCD-003 LMCD-1560) '98
 Free Jazz界のベーシスト吉沢元治の金大煥来日公演の際に売られていたCD。2,800円のクレジットがあったが何故か1,500円で入手できた。金大煥はLiveでも語っていたがLiveの瞬間を大切にしているため、残されている作品は皆無に近いらしい。そんな中、'98に他界した吉沢氏と金大煥が共演のこの実況録音盤は貴重かもしれない。'93/Sep./8の録音"Duo-II"で金大煥と共演。後半にかけての鬼気迫る演奏が凄まじい。

 詳細は下記:
http://homepage1.nifty.com/apia/7.yoshizawa.html


音喜時


☆Live at 武蔵小金井 Art Land on Feb./17/'01
 Liveは2部構成で行われた。第1部は金大煥(per.)と向井千恵(胡弓、鈴蹴り、voice.)、第2部は金大煥(per)と佐久間久美子(舞踏)に後半に向井千恵(p.、voice.)が絡む構成。主にFreeインプロビゼーションであったが、金大煥と向井千恵のお互い勝手にやりまくる姿が面白かった。(^^; 狭い場所故、佐久間久美子(舞踏)は窮屈そうであったが、最後向井千恵が胡弓を持って再度演奏しようとしたその瞬間、金大煥は「もう、おしまい。」といった感じで終了。向井千恵は名残惜しそうにドラを叩いていた。なんだか凄かった。(^^;
 その他、第2部では書道の講座と良いお話の講義(日本語がやはり上手)があった。この辺に韓国の伝統を感じた。「アリラン、アリラン・・・」のハングルは最近の勉強の成果で読めた。(^^; なおその際、白い布に反対側からハングルと漢字を書いたのでこれにも驚いた。

☆Live at 神戸Big Apple on May/04/'01
 連休中神戸方面へ出張が入ったのでついでに見て来た。(^^; おおたか静流(voice)、内橋和久(g,daxophone)という強力布陣。よって狭いBig Appleは満員御礼。前回初めて見た金大煥のLive、共演の向井千恵との中途半端な妙も興味深かったが、この日のLiveは本当に素晴らしい内容であった。おおたか静流の個性的で強烈なVoiceに内橋のオリジナリティ溢れる楽曲にむしろ金大煥がサポートする形で前半は進行していく意外な展開となった。中盤以降は金大煥もキレがあるper.で応戦、きっと彼は負けず嫌いだろうな。(^^; 結果的におおたか静流、内橋和久がともすれば手抜きモードに入りがちな(笑)金大煥の潜在力を上手く引き出していたように思う。


2001年2/17のチラシ

☆Live at 柏・STUDIO WUU on May/11/'01
 で出張帰りに今度は地元に近い柏でLiveをやるというのでついでに見て来た。まさか今年になって3回も金大煥を見るとは思わなかった。この日は梅津和時(sax)、鬼怒無月(g)との組み合わせ。柏のSTUDIO WUUはこの日初めて行ったが思った以上に広いスペースであった。客層はおじさん、おばさんが中心で完全に私は浮いていた。鬼怒無月のこの日のプレイは実に控えめで多分既に金大煥の頭の中では忘れ去られた存在になっているであろう。(^^; 反面、梅津和時のプレイは凄まじく金大煥との相性は良いと見た。ただ、この日の金大煥は完全に淡泊モードに入っており、さっさと終わらせてしまいたい印象であった。(苦笑)