旧・ユーゴスラヴィアのロック

 ユーゴ問題に取り組んでみました。

 悲劇のユーゴ。内戦でメタメタ状態であるが、そのようなところでも素晴らしい音楽が存在している。極僅かであるが我が国にも紹介された作品はそれぞれ味わい深い作品が満載であった。まだ解明されている部分が少ないが、Blues/Hard RockをベースにProgressive Rockやイタリアン・カンタウトーレ的などこか陰のある叙情的サウンドを奏でるBijelo Dugmeを初め、多くの優れた作品が埋もれていると考えられる。まだIndexi, Yu Grupaなど主要な作品は残念ながら未聴であるが、これまで耳にした作品を紹介してみようと思う。

バルカン音楽紹介の決定版Web音頭。正直な解説に好感が持てます。
http://www.ondo.net

参考文献:
Garden Shed List Vol.20,21,26,29,50



(基本的にアルファベット順に並べています)

☆Dorde Ilijin / Eavesdropping Forbidden! (Mellow Records MMP 426) '83
 Takoのキーボーディストのソロ。実に暗くノスタルジックな作品である。フルートがあるためJethro Tullぽいが疾走感はなくPink Floydのようなキーボードもある。しかし、Ds.プレイが素晴らしく特に"Balkonien Meditation"のプレイには注目だ。このDiskは板起こし盤でボーナス曲4曲は若干テープのヒス・ノイズが多い。Dordeは英語読みではGeorgeとなるようである。なお、CDDBに登録されていなかったので入力しておいた。活用して頂ければ幸いである。

☆Bijelo Dugme / Koncerto Kod Hajducke Cesme (Croatia Records CD D 5061809) '77
 ボスニア・ヘルツェコビナ出身のHard Progressive Bandの代表。
黄色い声援もある異様な盛り上がりのLive盤であり、人気の高さが伺いしれる。
小曲"Ima Neka Tajna Vesa"は消え入るような物悲しさを持った陰りのある名曲。
☆Bijero Dugme / Bitanga i Princeza" (Croatia Records CD 860041 5 02604 0) '79
 5th。とにかくラストを飾る"Sve ce to Mila Moja Prekriti Ruzmarin", "Snjegovi i Sas"が素晴らしい。厳かに始まって情熱的なVo.が炸裂する!往年のイタリアン・ロックを彷彿させる。

☆Bijelo Dugme / Sanjao Sam Nocas da te Nemam (Croatia Records CD D 5053675) '84
 旧ユーゴを代表するBijelo Dugme、'74〜'83のバラード集ベスト盤。ベストでありながらマニアの間ではこれが最高傑作と言われているものでもある。(^_^;
"Sanjao Sam Nocas da te Nemam"は陰りのある出だしから少しずつ盛り上がっていく叙情的ナンバーでしみじみとくる。全体的に暗くて陰のイメージがある。ブルージーな曲なんかもあって全体的にはバラエティーな印象を持つ。


Sanjao Sam Nocas da te Nemam

☆Drugi Nacin / same ('75), Nepocin / Svijet po Kojem Gazim ('77) (Taped Pictures CD 2014 : 2 on 1 CD)
☆Drugi Nacin / same (Croatia Records CD-D-5041962) '93

 「Drugi Nacin, Svijet po Kojem Gazim」は2 on 1作品。'75の作品は彼らの1stで軽快なブルース・ロックを基調としたハード・ロックである。いきなり"Opet..."はZeppelin/Heepのような叫びでびっくりするが、ここのVocalistはメジャー級の歌のうまさである。フルートもいい味を出している。全般的にBritish Hard Rockの影響が大きい。Zeppelin/Heep/Purple/Tullにイタリアン・ロックをミックスした感じと言えばある程度は想像していただけるであろう。Heep風陰りのあるしっとりとした"Na Mom Dlanu"は名曲。フルートの叙情さが素晴らしく表現されている"Lile su Kise"も必聴。その後メンバーチェンジをした際にバンドをNepocinと改名してリリースしたのが「Svijet po Kojem Gazim」である。こちらはどちらかというとシンフォニックの名作と言われているが、やはりCreamのようなBlues Hard Rockや印象的なフルートがJethro Tullを思い起こさせる。
 一方、'93の作品は再結成アルバム。基本はHard Rockであるが、Popな面もある。イタリアン・ハード・プログレ的で所々密かに叙情的なフレーズがあるので、その手のマニアはきいておいて損はないだろう。何しろテクニックが安定しているので、安心してきける。Vo.の声質は異なるが唱法が何となくYngwie Malmsteenで有名になったGoran Edmanに近いものを感じた。なお、'75の「Drugi Nacin」から"Opet..."を再録音している。

上が2 in 1のもの
下が1993年の作品




☆Leb I Sol / Devetka (Taped Pictures MCD 113)
 Best盤。炸裂するJazz Fusion Rockが素晴らしい。ユーゴのArti+Mestieriといわれるのも頷ける。各オリジナル作のCD化を望む!

☆Leb I Sol / Kao Kakao (Croatia Records CD 5226611)
 10枚以上リリースしているマケドニアのスーパー・グループLeb I Sol。このアルバムは'87頃のリリースされたものらしく、'98にCD化された。残念ながら初期のBest、「Devetka」に収録されているような圧倒的テクできかせる作品ではなく、むしろ黒っぽいイメージである。レゲエ?ラストに収録されている"Cekam Kisu"もそんな感じであるが、叙情的部分と民族音楽的部分が交錯していて良い。

☆Misha Calvin / Evolution (Vienna Records MISHA 001) '93 (*1)
 '80s中期に英国に移住し'93のこの作品でデビュー。硬派なメロディアス・ハード・ロックの隠れた名作。ここぞとばかりに入ってくるギターの爪弾きには今きいてもゾクゾクくる。Vo.はIan ParryとTony Martinが参加、職人気質が漲っている作品。元GirlのDs.、Pete Barnacleの参加にも注目である。全てのHRファン、マスト・アイテムと言っても過言ではない。'95に2nd「Evolution II」をリリース。

☆Pro Arte / Kiseli Bonboni (Suzy LP 313) '75 (*2)
 これは凄い!ジャケットも凄い!
 冒頭は黄桜カッパCMユーゴVer.のような曲が炸裂。「うーぱぁぱぁ、うぱぱぱぱぁ」というコーラスが印象的な曲。(^_^;2曲目は叙情派イタリアン・カンタウトーレを彷彿させる展開になりどうなっちゃったの状態の珍盤。音楽という字そのままをサウンドにしたシロモノ。これをきいてみんな脱力しよう。旧ユーゴのダーク・ホース的存在?とにかく大穴であった。

☆Sedlar / Uz Pomac Velikih Prijatelja (RB LP5334) '79
 マケドニアのSedlarなる人物のソロ。
サンタナ風の軽快な音を出す。Jazzっぽい部分もあり、安定した演奏がきけるので現地ではメジャーな人ではないか?

☆Sedmina / Melita & Veno Dolenc (Mellotoron Records MRCD 1003-2) '80
 内ジャケの骸骨と踊っているお嬢さんのイメージからアシッド・フォークと思ってしまうのだが、実に素朴な音。ユーゴのSpirogyraとも言われている。

☆Smak / Star? Mlad. Vecan? (Raglas Records RG044)
 リズム隊が軽快できいていて気持ちが良い'70 HR。Vo.の上ずり方はイル・バレのYS風であるが、こちらはカラッとした印象。テクニックも安定しているので'70s Hard Rockマニアは要チェック。
ボーナス・トラックとして"Mars na Drinu"収録。

☆Toma Beric / Oya Noya... (Suzy LP 327) '80 (*3)

 これはしゃがれ声の男性Vo.物。ジャケット通りのサウンドであった。(^_^;

☆Vlatko Stefanovski / Trio (Dallas Records CD Dallas 180) '99 (*4)
Leb I Solのギタリストのソロ。バルカン/地中海フレーバー溢れる作品。1曲目はちょっとずっこけ気味であるが、マケドニアのトラッド・ソングらしい軽快で軽快なアレンジが冴えた優れものの"Kalajdzisko Oro"やHRフレーズが爽快な"UFO"はきき応え充分。"Gluvo Doba"で初めてVo.が登場するがいい感じでフルートとギターの爪弾きが美味。BluesフレーズはあのGary Mooreを思い起こさせる。現在も精力的な活動を続けておりLiveアルバムも発売されているようである。
詳細は下記:
http://www.vlatkostefanovski.com.mk

1
ミシャ・カルビン
Misha Calvin / Evolution
2

Pro Arte / Kiseli Bonboni
こんなので買う人いるの?
ジャケットその1
3

Toma Beric / Oya Noya...
こんなので買う人いるの?
ジャケットその2
4

Vlako Stefanovski / Trio

☆Zlatko Manojlovic / Jednoj Zeni (King K22P616) '86
 邦題は「女神(ビーナス)の誕生」。ズラトコ・マノイロヴィッチはユーゴを代表するアーティストでFlash, Dah, Gordiなどのグループを率いてヨーロッパ各地で活躍していたらしい。私も彼の名前だけはインパクトもあることから聞いてはいた。この作品はGordi解散後のソロ活動の中にリリースされたもので、正直言って巷の評判はあまりよろしくない。しかし、"Volim vas Zauvek(誓いの船出)"のソフトな歌声なんかイタリアン・カンタウトーレ・ファンには一度きいてみても損はないと思う。"Jednoj Zeni(女神の誕生)"、"Niked NecU Biti Tvoj(素敵な悪魔)"はまるでGary Mooreのちょっぴりブルージーさを抜いた感じのしっとりとした曲調であり一聴の価値有り。