Sieges Even

 ドイツの前衛的なTechnical Rockの代表格。スリリングな演奏には10年以上前の作品を今きいてみても度肝を抜かれる。
 '81に結成。メンバー構成はMarkus Steffen (g), Oliver Holzwarth (b), Alexander Holzwarth (Ds.), Franz Herde (Vo.)。'89の時点でMarkusとAlexanderは19歳、Oliverは20歳、Franzが34歳(爆笑)。なんとも凄い構成である。
Demoとして「Symphonies of Steel」, 「1987 Bootleg - Cassette」, 「Repression & Resistance」, 「Apocalyptic Disposition」, 「Violent Alterations」と5本立て続けに制作されたらしい。
 2ndを最後にとうとう、というかやっぱりというかFranz Herdeが脱退。3rdの「A Sense of Change」では新たにJogi Kaiserが加入。彼のVo.が冴え渡る強力な作品となった。頂点を極めた3rdであったが4thでVo.がGreg Kellerに、g.がWolfgang Zenkに交代してしまう。但し、Jogi Kaiserもはアシストとしてクレジットはされている。Greg KellerのVo.もまた良し。サウンドによくマッチしている。5thの「Uneven」でBork KellerというKey.が加入。Holzwarth & Keller兄弟??メンバー構成になり現在に至っている。
 最近World Disqueのチラシで解散していたことが発覚。無念である。

(追記)
 Sieges Evenは残念ながら解散の道を辿ってしまったが、Holzwarth兄弟はParadoxの作品に参加。また、現在Looking-Glass-Selfというプロジェクトも立ち上げて今後の動きには注目である。Looking-Glass-Selfのメンバーは元AngraのAndre Matos、ゲストにJens Johanssonという強力布陣で「Equinox」という作品を制作中。MP3サウンド・ファイルをダウンロードしてきいてみたが、期待大である。

('04/11/5追記)
 Looking-Glass-Selfのプロジェクト崩壊後、Val'Paraisoというプロジェクトで良質のMP3音源を公開していたが結局実を結ばずで今後どうなってしまうのかとファンを心配させていたが、Headway Festival 2004でSieges Evenとして見事に復活。最近サイトもリニューアルされたのを機に追加してみた。

 詳細は下記:
http://www.siegeseven.com/(消滅)

☆Lifecycle (Steamhammer SPV85-7537) '88
☆Napalm / Sieges Even (Teichiku Records TECP-25551)

 ジャケットのCPU 8085基板が時代を物語る。
 Watchtowerの2ndはこれの進化系?Sieges Evenに対抗したのか?それほどWatchtowerの2ndはこの「Lifecycle」の方向性に近い。ついでにVo.のオッケペケー度も。'88でこれほどのTechnical Thrashをやっていたというのが凄い。そういえば、最近のHM作品に残念ながらこういった作風が見あたらない。Sieges Evenの1stやWatchtowerの2ndの方向性を目指した最近のバンドっていないものか?
 なお、日本ではNapalmとのカップリングでリリースされた。但し、完全版ではなくオリジナルには"Stranggler from Atlantis"とインストの"Arcane"は収録されていない。

☆Steps (Teichiku Records TECP-25550) '90
 2ndは1stと作風ががらりと様子が変わっている。最初きいた印象は「なんじゃこりゃ?」。とにかくMetal色が無い変てこりんな作品なのである。実験的作品というのは数多くあるが、これは正に音を実験し、解体しているといった印象。少なくともHMとはいえない。あえていうならProgressive Rockということになるのか。JazzともFusionとも違う不思議な感触。どう表現したら判らない。オリジナリティ抜群。いつきいても飽きないし、今だに新鮮な驚きがある。


Napalm / Sieges Even


Lifecycle


Steps

☆A Sense of Change (Steamhammer SPV 084-76412) '91
 3rd。テクニカル・ロックとしてひとつの極みに達した作品。個人的には彼らの最高傑作。2ndの解体を主軸とした音から整合性を持たせた意欲作。しかし、このアルバム以降日本盤の発売が無く、Sieges Evenの認知度は一気に下がってしまう。作品のボルテージは最高潮なので、これはしごく残念に思う。一言で言うとDs.のフレージングや、リフを殆ど刻まずギターのメロディーの美しさを見事に表現しているところなどから、Rushからの影響が最も見られる作品。また、Vo.チェンジが成功した代表例。やはり歌えるVo.がいるというのは強い。
2ndの音からまさかこういった音になるとは想像できなかったため、最初きいたときには大変驚くとともに感動した。"Change of Seasons"のストリングスの美しさには背筋がぞくっとする程である。再評価願いたい作品。

☆Sophisticated (Under Siege Records : Semaphone CD 32683) '95
 4th。Kai Hansen Studio等で録音。とうとう自主制作となってしまった?が、めげずに地道に活動していた。3rdの流れを汲んだこれまた素晴らしい作品。Vo.が交代したが、声のパワーとして見てみるとJogi Kaiserに比べGreg Kellerが強力で、幾分ストレートでパワーメタルよりになったこの作品には非常に良く合っているような気がする。ジャケットはいただけないが...。

☆Uneven (Semaphone 37746-422) '97
 5th。現在のところ最新作。4thより更にアグレッシヴになった。どんどんシンプルになっていく感じがしているが...。


A Sense of Change


Sophisticated


Uneven

☆The Art of Navigating by The Stars (InsideOut Music SPV 48472 CD) '05
 Looking-Glass-Self、Val'Paraisoなど長い回り道を経て見事な復活、大傑作の6th。作風としては3rdの"A Sense of Change"に近く、ツボを知り尽くした大人のサウンド。Vo.はGreg KellerからArno Menses、g.はWolfgang ZenkからMarkus Steffenにメンバー・チェンジ。またしても逸材の加入。なお、Val'Paraiso時代には既に原曲が出来上がっていた"Condors"という曲はMP3音源として公開、後に"The Lonely Views of Condors"として収録された。
 InsideOutと契約を結んだことによって入手しやすくなったのは嬉しい限り。スリップケース入り。

☆Paramount (InsideOut Music SPV 79582 CD) '07
 奇跡の復活&傑作をリリースし順調な再出発後、満を持してリリースされた7th。正直前作以上に地味な作品。聴き込みを要する作品だ。"Iconic"では彼らに最も影響を与えたであろうRushのフレーズをさり気なく入れている。
☆Playgrounds (InsideOut Music SPV 79842 CD) '07
 '07の「Paramount」ツアーの模様を収めたSieges Evenの初Live盤。選曲が私好みのものになっていて美味しい。(^^; やはり再結成後の彼らは「Uneven」路線ではなく「A Sense of Change」の発展系だったことが分かる。

☆Angra / Angels Cry (Victor VICP-5314) '93
☆Angra / Evil Warning (Victor VIZP-2) '94

 実はこのアルバムでDs.をたたいているのが、Sieges EvenのAlexander Holzwarthなのでした。職人的で堅実なDs.は流石である。
 Sieges Evenマニアでも充分納得できるAngraの1stは、鳥肌が止まらない"Lasting Child"で締めくくる。まさに完璧な曲でクラシックのアレンジで成功した数少ない名曲で、今きいても全く色褪せていない。個人的に'90年代名曲Best10には文句なしにランクイン。その他"Never Understand"は民族色豊かな曲でSepulturaと共にブラジルを感じさせてくれる曲である。
 もう1枚のミニ・アルバム「Evil Warning」は1stの「Angels Cry」に収録されていた作品から、"Evil Warning", "Angels Cry"," Carry on"のNew Versionと、Kate Bushのカヴァー"Wuthering Heights"のEdit Versionを収録。限定盤にてリリース。
 詳細は下記:
http://angra.digitalchainsaw.com

☆Paradox / Collision Course (King Records KICP 766) '01
 Sieges Evenが解散してしまった!至極残念。後でレア・トラック物のリリース予定。そして現在Holzwarth兄弟はParadoxの11年ぶりの新作「Collision Course」に参加している。今後の健闘を祈りたい。この作品は久しくきいていなかった類の直球Thrash/Power Metal。強いて言えば「Master of Puppets」期のMetallicaのサウンドをもう少しストレートに現したような音である。メンバー皆すっかりオヤジの風貌であるが、気持ち良いくらい突っ走っている。演奏も当然というか安定しており、作品のクオリティは高い。メタルに人生を捧げた人は必聴。しかしSieges Evenのような音を期待してはいけない。あくまで堅実なバックとして参加しているといった印象。なお、日本盤には3曲のボーナス入り。
 詳細は下記:
http://www.paradox-bangers.de

☆Blind Guardian / Nightfall in Middle-Earth (Victor Entertainment VICP-60295) '98
 トールキンの物語を題材とした6th。分厚い日本語解説でCDケースも厚く力の入れようが凄まじい。ベース担当がOliver Holzwarthである。この作品は壮大なテーマであり、先行シングルにもなった"Mirror Mirror"の疾走Versionなどは耳を惹く。しかし全般的な印象は緻密な構成と言うよりも、いろいろ悩んで作り上げたあげく「まっ、いいか。」という開き直りが見え隠れしていて、そこが実にBlind Guardianらしい。(^^; なお、日本盤にはボーナストラック2曲収録されている。

☆Markus Steffen / Unsheltered Places-Cycle for Guitar 1992-1999 (Calamus Records CR 0001) '99
 元Sieges EvenのMarkus Steffenのソロ作。非常にパーソナルな内容で完全にクラシック・ギター中心の作。テクニカルで不協和音を時折アクセントに挟みながら非常に聴き応えのあるサウンド。

☆V.A. / A Tribute to ABBA (Nuclear Blast NB 543-2) '01

Therion/ Summernight City *
Metalium / Thank You For The Music *
Sinergy / Gimme! Gimme! Gimme! *
At Vance / Money Money Money
Morgana Lefay / Voulez-Vous
Paradox / S.O.S. *
Rough Silk / Take A Chance On Me *
Spiral Tower / Chiquitita *
Sargent Fury / Eagle
Flowing Tears / One Of Us *
Nation / Waterloo
Custard / Super Trouper *
Tad Morose / Knowing Me, Knowing You *
Glow / Dancing Queen
 出るべくして出たABBAのトリビュート。(笑) Paradoxがカヴァーした"S.O.S."は一瞬Coverらしくない程German Power Thrash化していた。でもそれ程良いアレンジとは思えなかった。(^^; なお、"*"は初出物。
その他の曲の印象:
Therion Therionらしさ爆発。これは個性的で良い。
Metalium ミュージカル風でGood。ABBAの良さを上手に捉えている。ルックスと裏腹に爽やかな印象。当方一番のお薦め。(^^;
At Vance 頑張りすぎて力が入りすぎ。ABBAの魅力はさらっとしている所がミソなのにそれをぶち壊している。
Morgana Lefay 安直なVer.
Rough Silk Anke Hansenをフィーチャー。忠実に近いがGoodなアレンジ。
Spiral Tower Vo.はいいのだが、バックの演奏、特にギターが安直Metalしているのが残念。結局原曲の良さが更に光る結果に。(^^;
Flowing Tears 普通のアレンジで可もなく不可もなく。
Custard 上記同様普通のアレンジで可もなく不可もなく。
Tad Morose ヘンに勇ましくて今一歩。
Glow これはいい!Metaliumに次ぐ当方お薦め。崩し具合とコーラスの意外性がGood。


Markus Steffen /
Unsheltered Places-Cycle for Guitar

☆7 for 4 / Contact (Streetlife-Melody 1002-08-01) '01
 「Sophisticated」から参加したWolfgang Zenkが中心となって結成された7for4の1st。大人向け(^^; テクニカル・フージョン・メタルの傑作。"La Provence"のしなやかなオープニングから心地良いアヴァンギャルドな曲調に展開している様が素敵だ。"E-Gyptian"のWolfgang Zenkの軽快でJazzyなギターフレージングが見事。"Highlands"なんかHappy The Man大好きな人にもお勧めだ。"Rushian"はモダンさとクラシカルさを見事に融合させた斬新なアレンジで非常に興味深い。"Catking"でのVo.はこれまた「Sophisticated」から参加したGreg Kellerが共作という形で参加している。彼のVo.も流石の表現力で脱帽。Sieges Evenマニア必聴。

☆7 for 4 / Time (MGI Records MGR 1020) '04
 2nd。これまた傑作である。ゲスト女性Vo.のConny Kreimeirerが参加した"Where are You Now"のメロディアスでポップな曲調は新境地として注目に値する。"Perpetuum Mobile"の流れるように転調する展開は7for4の真骨頂。ウエスタンBlues & Jazz & Metalがミクスチャーしていながらすっきりきけてしまう"Burnt Chicken Wings"はこの手のマニアは必聴だろう。7for4のアルバムは入手が結構大変かもしれないが見つけたら即ゲットを強く薦める。

☆7 for 4 / Diffusion (MGI Records MGR 1023) '08
 リーダーWolfgang Zenkによる7 for 4の待望の3rd。数々のProgressive Metalをきいてきた玄人向けハイ・テンション・サウンドは健在。過去作に比べてストレートな印象があるが流れるような展開の中での変則的な曲に胸が躍る。この作品も滅多に店頭では見かけないので見つけたら即ゲットだ。
 詳細は下記:
http://www.7for4.de


Contact


Time


Diffusion

☆Bonebag / Noli Me Tangere (QuiXote CD 56) '07
 Sieges Evenのvo.だったArno MensesのBand、Bonebag。Arno Mensesはvo.&ds.を担当。Echolynをアグレッシブにした感じで、これは傑作だ。
 詳細は下記:
http://www.bonebag.nl

☆Subsignal / Beautiful & Monstrous (ZYX Music GCR 20048D-2) '09
 2009年9月に再度解散してしまったSieges Even。その後のSieges Evenの音楽性を引き継ぐのが元Sieges EvenのArno Menses(vo)とMarkus Steffen(g)参加したSubsignalだ。正に後期Sieges Even、大人のProg. Metalが展開される。勿論Sieges Evenマニアは必聴。このDiskはBonus Trackの"Rain is The Most Beautiful Color"を収録したデジパック限定盤。
 2010年4月には欧州クラブサーキットが予定されているようだ。精力的な活動をしているのが嬉しい。
 詳細は下記:
http://www.subsignalband.com/


Bonebag / Noli Me Tangere


Subsignal / Beautiful & Monstrous