素敵なおじさま・2
あの日も暑かった。 もうもうとした空気の中、私は秋葉原でDCアダプターを探していた。なかなか目当ての電圧のDCアダプターが見つからず、ついには迷路のようなジャンク屋に迷い込んだ。 さすが世界に誇る電気街。探せばあるものだ。理想に近いアダプターを見つけたが、商品は数年分の埃をかぶっていた。私は手に取るべきかどうか躊躇していると後ろからおじさま(店員)が話しかけてきた。 「プラス、マイナス切り替える事が出来るDCアダプターもありますよ。でも喜ぶ人もいれば、嫌がる人もいる...。」 それはそうだろうと頷くと、再び、 「喜ぶ人もいれば、嫌がる人もいる...。フフフ。」 と口癖のように返してきた。 「そうでしょうねぇ、でもそう思うのはマニアだけでしょう。」と相づちを打つと、再度、 「喜ぶ人もいれば、嫌がる人もいる...。フフフ。」 これは−−−。 おじさま(店員)はまるでサンプリングのごとく一定のリズムで同じ言葉を繰り返す。 いけない、これでは絡め取られてしまう。私は同行していた妻の手を引いてさりげなくその場を立ち去った。 結局私が店を出るまでそのセリフは続いた。彼は一体何年この言葉を言い続けていたのか? 「喜ぶ人もいれば、嫌がる人もいる...。フフフ。」 その日の私の頭の中で延々とリピートし続ける呪文。 |
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(まだ続く)