(注:今回は本物です)
まったく大変なグループが登場しました。今やイギリスの音楽界は、約l年半前に突如ジミ・ヘンドリックス・エクスピアリアンスが現われた時以上のショックを、そのグループ、アーサー・ブラウンと彼のクレイジー・ワールドに与えられたのです。
彼らのレコード「ファイアー」は7月の初めにヒット・パレードに登場するやいなや、ランクを急上昇、'68年8月初句には第2位にまで上ったほどです。しかし、それ以上にみんなを驚かせたのは、クレイジー・アーサーと呼ばれるほどの、アーサー・ブラウンの意表をついた格好でしょう。長い髪の毛がモジャモジャで、アゴと口のまわりにヒゲをはやしているぐらいでしたら、これまでにもサンフランシスコのグループのアーティストによく見られた風体です。ところがアーサー・ブラウンは、目のまわりにタヌキのようにスミを塗り、医者が“もう信じられない位危険な状態にある”と宣言したのにもかかわらず、全然休養をとらず、ステージでクレージー・ワールドと踊っているうちにアンプで痛めたヒザとつまさきをそのままにして、動き続けているのです。(これはもう骨が折れたままになっているのだそうです)
この正体不明の飛行物のように、突如ロンドンのミュージック・シーンに現われたアーサー・ブラウンは、今から24年前、ウィットビーという所で生まれました。まったく信じられないことですが、3年間だけレイトンストーンのポーイズ・スクールで先生をやっていたことがあるそうです。しかし、教頭から髪の毛を短かくしろ、と言われたのに反抗して辞めています。
アーサー・ブラウンという名前を、一番最初に音楽関係者が耳にしたのは、今から約1年前に行なわれたウィンゾール・ジャズ・フェスティヴァルでのことでした。この時は燃えたつような髪の毛をぷり下げた格好だけが話題になっただけでしたが……。
やがて、このアンダーグラウンド・シンガーは、ザ・フーのマネージャーであるキット・ランパートに認められ、レコード界にデビューすることになったのです。
このアーサー・ブラウンの音楽は、ジェイ・ホウキンスとリトル・リチャードとトム・ジョーンズとそれにオペラのマリア・カラスの中間にあるものだと言われていますが、そのステージにより大きな魅力を発するそうです。
尚、クレイジー・ワールドのメンバーは、ヴィンセント・クレイン、ニック・グリーンウッド、それにドレイケン・シーカーの3人でしたが、つい最近グリーンウッドを残し、他の2人がグループを去っています。そして代りにオルガンにビル・デイヴィー、ドラムスに17才のカール・パルマーが加わっています。9月にはアメリカ公演を行ない、その後でLPを作るなど、今後のスケジュールはギッシリつまっています。アーサー・ブラウン
ファイアーFire・・・・・・・・・2'52''
レスト・キュアRest Cure・・・・2'41''
■ファイアー
アーサー・ブラウンとクレイジー・ワールドのメンバー(だった)、ヴィンセント・クレインが作詞、作曲したものです。
“悪魔の声”と言われている独特の声で、アーサー・ブラウンが表情豊かに歌っています。イギリスのグループですが、かなりサンフランシスコ・グループ的なサウンドが聞かれます。実際、これをステージでみたら大変な追力でしょう。とにかくユニークなレコードが創られたものです。■レスト・キュア
同しコンビが作つたナンバーです。ヴォーカルのサウンドの音質をかなり変えているようです。解説/朝妻一郎
¥400